研究概要 |
本研究では超省エネルギー次世代エレクトロニクスの候補であるスピンエレクトロニクスの実用化への大きなブレークスルーのために第一原理マテリアルデザインと実証実験の連携研究を行う。 H22年度は、半導体スピントロニクスのマテリアルデザインに関して、LiやCu等の格子間不純物同時ドーピング法による高いキュリー温度をもつ(Ga,Mn)Asの設計を行った。また、CuNi合金における相分離のシミュレーションを行い、巨大ペルチェ効果の起源について議論した。磁性半導体の物性予測手法の確立のために磁気円二色性計算ルーチンを開発し(Cd,Mn)Te,(Zn,Cr)Teや(Ga,Mn)Asについての実験結果の再現に成功した。さらに、スピントロニクスデバイスデザインに不可欠な界面の電子状態計算の精密化のためにフルポテンシャルKKR法プログラムの整備をH.Ebert教授との共同研究により行った。この共同研究ために小倉はLudwig-Maximilians-Universitaet Muenchenに半年間滞在した。 金属系スピントロニクスのデザインに関して、磁気異方性の第一原理マテリアルデザインをMgO/Fe/Pt(001),MgO/Fe/Au(001)について行い、基板依存性およびMgO層の役割について議論した。 Pd/Fe/Pd(001)やPt/Fe/Pt(001)についても計算を行い実験結果と比較した。磁気異方性シミュレーターの開発に向けて、GP-GPUによる高速化、双極子-双極子相互作用計算コードの開発および電圧印加状態の計算法の定式化を行った。実証実験としては磁気異方性への電界効果の起源解明に向けてAg/超薄膜Fe/MgOおよびAu/超薄膜Fe/Au/MgOにおける電界効果を実験的に調べ、異方性変化の観測に成功し、異方性変化は界面効果に起源を持つことを確認した。
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