研究領域 | コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス |
研究課題/領域番号 |
22104012
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 和則 大阪大学, 基礎工学研究科, 特任准教授(常勤) (60379097)
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研究分担者 |
小田 竜樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (30272941)
小倉 昌子 大阪大学, 理学研究科, 助教 (30397640)
野崎 隆行 産業技術総合研究所, ナノスピントロニクス研究センター, 研究員 (60452405)
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キーワード | スピンエレクトロニクス / 第一原理計算 / オーダーN法 / 磁気異方性 / 電子輸送現象 / 永久磁石 |
研究概要 |
H23年度は、半導体スピントロニクスのマテリアルデザインに関して、MgOベース磁性半導体の材料設計を行った。この系は、Mg空孔やN添加により強磁性が発現し、遷移金属の使用無しで磁性があらわれる「d^0強磁性体」であることがKKR-CPA計算により明らかになった。特にMg空孔は第2近接位置に集合しやすく、実効的にパーコレーションしきい値を下げている。このため比較的低濃度のMg空孔で強磁性が発現する。 半導体スピントロニクステバイスのまるごとシミュレーションを目指して層数に対してオーダーN計算が可能な遮蔽KKR法の開発を行い、多層膜構造の電子状態の計算を行ってきたが、この手法に久保公式による電気伝導率計算を組み込んだ。この方法を用いてGaAs PN接合のDC電気伝導を計算した。 金属系スピントロニクスのデザインに関して、外部電界下での磁性薄膜の磁気状熊を、密度汎関数理論に基づいた相対論的2成分擬ポテンシャル第一原理電子状態計算法を用いて研究し、薄膜Pd/Fe/Pd(001)、薄膜:Pt/Fe/Pt(001)、MgO/Fe/Pt(001)およびMgO/Fe/Au(001)の磁気異方性とその電界効果を調べた。評算コードの高速化にも取り組み、MPI並列とOnenMP並列を組み合わせたハイブリッド並列計篁や、これとGPU(graphics processing unit)を組み合わせた計算を可能にした。関連する実証実験としてPd/超薄膜Fe/MgO接合構造における電圧磁気異方性制御の実験を行った。 関連研究として、Feにおいて、VやCrのような遷移金属元素添加により磁性が増大することを第一原理電子状態計算により発見し、永久磁石材料デザインの新しい方向性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
磁性半導体について当初の計画に含まれていた同時ドーピンング法によるデザインが発展し、LiZnAsベース磁性半、導体やMgOベースd^O磁性体等の新物質の提案につながった。また、関連研究として提案していた新型永久磁石材料のデザイン指針が得られた。磁気異方性制御に関しては、実験と理論が互いに批判的な立場で共同研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
金属系スピントロニクスに関しては、接合薄膜MgO/Fe/M(001)(M=Pt,Pd,Au)に加え、MgO/Fe/(PdFe)_n/Pd(001)、MgO/Fe(1-x)Co(x)/Au(001)等に応用し電界印加による磁気異方性制御法のデザインを行う。実証実験では、原子相互積層法により作製したFe1PtもしくはFe/Pd系薄膜における垂直磁気異方性、および電圧印加効果を調べ、理論との比較を通して起源解明に取り組む。 半導体スピントロニクス材料の設計では、今までは同時ドーピング法に注目し均一な磁性不純物添加を目指してきたが、ナノ構造の自己組織化を用いる方向にデザインを進めていく。そのために、クラスター展開法のコード整備を行う。オーダーN法については引き続きデバイスの丸ごとデザインに向けたコード整備を行っていく。
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