研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
22105002
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
茶谷 直人 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30171953)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 炭素-水素結合活性化 / キレーション / 配向基 / ルテニウム / ニッケル |
研究概要 |
有機化合物には、数多くの異なった性質、環境の炭素-水素結合が存在する。その中で、ある特定の炭素-水素結合のみを位置選択的に反応させることが、炭素-水素結合変換反応を有機合成反応として確立するためには重要である。今回、2座配向基を利用することで、2種類の炭素-水素結合のアルキル化を見いだすことができた ニッケル(II)触媒存在下、芳香族アミドとハロゲン化アルキルを反応させると、アルキル化が進行することを見出すことができた。2-アミノキノリン配向基の存在は必須である。2-アミノキノリン配向基の代わりにナフチル基を用いると反応しない。塩基の選択は重要で、炭酸ナトリウムがもっとも有効であった。芳香環のメタ位に置換基がある場合、反応は位置選択的に進行する。置換基の電子的性質にかかわらず、立体的に空いている側で反応が進行することがわかった。官能基許容性は高く、ヨウ素があっても、問題なく反応する。反応機構として、一般的でないNi(II)/Ni(IV)の触媒サイクルを提案している。ハロゲン化アルキルとしては、ヨウ素化物、臭素化物は効率よく反応するが、塩化物は全く反応しない。しかし、NaIを添加することで、塩化物でも収率良くアルキル化生成物を与えることがわかった。ハロゲン化アルキルは1級アルキル基に限定されるが、様々な官能基のついた臭素化アルキルが適用できる。 炭素-水素結合のアルケンへの付加も炭素-水素結合アルキル化反応である。様々な検討はなされていたが、適用できるアルケンは、ビニルシランなどに限られていた。不飽和化合物を使った例は、わずか4例しかなく、メチルビニルケトンの例は1例もなかった。しかし、塩化ルテニウム錯体と2座配向基を組み合わせることで、炭素-水素結合の不飽和ケトンへの付加が選択的に進行することを見いだした。反応の官能基許容性も高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二座配向基を利用した新しい炭素-水素結合の変換反応の開発を目指しているが、本年度は、炭素-水素結合のハロゲン化アルキルとのアルキル化反応の開発に成功した。炭素-水素結合のハロゲン化アルキルとのアルキル化反応は困難な反応であり、今までも数例しか報告例がない。また、炭素-水素結合の不飽和ケトンへの付加も2例しか、今まで報告されていない。そのような珍しい形式の反応を開発することができたことは、予定外であった。さらに、予備的ではあるが、ニッケルを触媒とする飽和炭素-水素結合のアリール化反応も見出すことができた。ニッケルを触媒とする飽和炭素-水素結合の変換反応は、われわれの知る限り1例しか報告例がない。
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今後の研究の推進方策 |
研究は、順調に進展しているので、基本的は、このまま研究を進めていく予定である。特に、飽和炭素-水素結合の活性化反応の開発に取り組む予定である。さらに、他の金属錯体の検討も行い新しい炭素-水素結合活性化反応を開発する。また、炭素-水素結合以外の炭素不活性結合の触媒的活性化反応にも取り組む予定である。
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