研究実績の概要 |
持続可能な科学技術の確立に向けて、効率的な合成手法の開発が求められている。本年度は以下の3つの反応を開発した。いずれも不活性結合を活性化して進行する原子効率に優れた反応である。 N-アリールアゼチジノールに[Rh(OH)(cod)]2 (5 mol %) および DIFLUOROPHOS (12 mol %) を作用させるとキラルなインドリノールが高い収率、エナンチオ選択性で得られることを見いだした。ロジウムアゼチジノラートが生成した後、β炭素脱離によってアルキルロジウムとなり、1,4-ロジウム転位を経てアリールロジウムとなる。これがカルボニル基にエナンチオ選択的に付加したものと考えられる。 アミノ酸から合成した光学活性なN-アレーンスルホニルアゼチジノールに[Rh(OH)(cod)]2 (2 mol %) およびrac-xyl-BINAP (5 mol %)を作用させると立体選択的にベンゾスルタムが生成することを見いだした。ロジウムアゼチジノラートが生成した後、β炭素脱離によってアルキルロジウムとなる。1,5-ロジウム転位を経てアリールロジウムが生成し、これがカルボニル基にジアステレオ選択的に付加したものと考えられる。 シラシクロブタン部位がフェニレン基で連結されたシクロブタノンにCp(π-allyl)Pd (5 mol %)およびP(n-Bu)(1-Ad)2 (10 mol %)を作用させると、炭素-炭素σ結合と炭素-ケイ素σ結合の間でメタセシス型反応が進行して5-シラオクタノンが生成することを見いだした。シラシクロブタンおよびシクロブタノンの連続的な酸化的付加によってパラダサイクルが形成された後、炭素#8211;ケイ素結合の還元的脱離によるシラインダン骨格の形成、炭素-炭素結合の還元的脱離によるシラオクタノン骨格の形成を経て進行しているものと考えられる。
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