研究概要 |
本年度の研究ではまず、末端アルケンと等モル量のB_2pin_2に対しトルエン溶媒中室温で、パラジウムトリフラート錯体とAlEt_3をそれぞれ2mol%作用させると、アルケンの脱水素ボリル化反応が触媒的に進行し、アルケニルボロン酸エステルが高収率で得られることを見いだした。 本反応は単純末端アルケン、並びに種々の官能基化された末端アルケンを用いても、対応するアルケニルボロン酸エステルを良好な収率で、かつ多くの場合trans体を選択性良く与える。さらに、アルケンに対し二倍モル量のジボロンを用いて反応を行うと、脱水素ボリル化が連続して進行し、合成中間体として有用性の高いジボリルアルケンが得られることを見いだした。この反応の鍵として、本ボリルパラジウム錯体が高い反応性を持ち、かつヒドロホウ素化等の副反応を伴わないため過剰のアルケンを用いる必要がないことが挙げられる。本反応では電子的に活性化されたスチレン、及びN-ビニルフタルイミドを基質とすると、対応する1,1-ジボリル化体が高収率かつ高選択的に得られるのに対し、脂肪族一置換アルケンを基質とした場合、位置選択性が逆転し、これまで一般的な合成法の報告されていないtraps体の1,2-ジボリル化体が位置選択的に、かつ高いtrans選択性で得られることがわかった。 また求電子的な遷移金属錯体を触媒として用いる反応開発に関しては、これまでに開発に成功した反応を基盤として有用天然有機化合物の全合成研究を行うと共に、活性化されたアルキンに対するイミン窒素の求核付加を契機とする含窒素複素環化合物の合成や、アレンの求電子的な活性化を契機とする高度に酸素官能基化された6,7員環化合物の合成に新たな可能性を見出すことができた。
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