研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
22105008
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
川口 博之 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (20262850)
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キーワード | シクロメタル化合物 / ヒドリド錯体 / タンタル / イミド錯体 / ニトリド錯体 / 還元反応 |
研究概要 |
低原子価状態の配位不飽和錯体は高い反応性をもち、窒素分子などの小分子に対し特異な反応性を示すと期待される。しかし、このような高反応活性種の合成・単離は難しい場合が多い。例えば、分子内でのC-H結合活性化反応による安定なシクロメタル化錯体の生成を経て、活性種が失活することが多い。だが、ヒドリド配位子とシクロメタル構造が共存する金属錯体では、興味深い反応性の発現が期待できる。ヒドリド配位子とシクロメタル化された配位子が再結合することで、配位不飽和な低原子価種の再生が可能である。本年度は、シクロメタル化された配位子とヒドリド配位子が共存するタンタル錯体とジアゾアルカンおよびアジド化合物との反応を精査した。 シクロメタル化-ヒドリド-タンタル錯体とMe_3SiCHN_2を反応させるとニトリド-イミド錯体が得られた。本反応は、ジアゾアルカンをニトリドおよびイミドに変換した初めての例である。ジアゾアルカンは金属-ヒドリドおよびアルキル結合に容易に挿入することが知られている。しかし、本反応では挿入反応は進行せず、4電子還元剤としての反応が優先して進行している。一方、Me_3SiN_3との反応では、ヒドリド錯体が2電子還元剤として段階的に作用し、モノおよびビス-イミド錯体が順次生成するのが観測された。 NaN_3との反応ではモノ-ニトリド錯体が生成する。しかし、Me_3SiN_3の場合とは異なり,2倍等量目のNaN_3とは反応しない。しかし、モノ-ニトリド錯体は熱的に不安定であり、分子内のC-O結合切断に2段階目の2電子還元能が用いられ、オキソ-ニトリド錯体が生成する。 以上、ジアゾアルカンおとびアジド化合物との反応を通して、シクロメタル化ヒドリド錯体が2電子および4電子還元剤として作用することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シクロメタル構造をもつヒドリド錯体が高活性な配位不飽和低原子価種の前駆体になることをこれまでに明らかにした。さらにこれの錯体を用いて、一酸化炭素の還元的多量化反応などを見いだしており、研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、アリールオキシド多座配位子をもちい、中心金属としては4dおよび5d遷移金属を対象に高活性反応場の構築を行っている。今後、アリールオキシド多座配位子にアミド基などを導入し、金属錯体の反応性への影響、効果を系統的に調べ、高活性反応場設計への指針をまとめる。さらに、これまでに見いだした小分子変換反応における中間体の単離、同定を行い、反応機構を明らかにして行く予定である。
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