研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
22105011
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
後藤 敬 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (70262144)
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キーワード | 分子活性化 / 有機元素科学 / 酵素モデル / 物質変換 / ヨウ化セレネニル / ホスフィン配位子 / 分子空孔 / 触媒反応 |
研究概要 |
酵素反応に含まれる反応活性種は、酵素基質以外の分子の活性化にも有用と考えられ、未開拓の反応性の宝庫と言える。従来その不安定性のために、人工系での合成が困難であった酵素反応中間体を有機反応剤・触媒として有効に活用することができれば、新たな分子活性化法が開発できるものと期待される。今回、酵素反応の活性中間体を巨大分子空孔により長寿命化し、その特異な性質を合成反応へ応用すべく検討を行った。また、空孔型骨格をもつ新規なホスフィン配位子の開発について検討した。ヨウ化セレネニル(RSel)は、甲状腺ホルモン活性化に関わる重要な酵素反応中間体として近年注目を集める高反応性化学種である。独自に開発したナノサイズ分子空孔を活用してヨウ化セレネニルの速度論的安定化を図り、セレンとヨウ素が高い親和性を有することを明らかにした。この性質を効率的物質変換に応用すべく検討した結果、β位に塩素または酸素官能基を有するセレニドに対しヨウ化物イオンを反応さることにより、脱セレン化を伴いアルケンが良好な収率で得られることを見出した。この反応が中性条件下、室温で立体特異的に進行することを示し、巨大空孔型分子を活用することで、その反応機構も明らかにした。さらに、ヨウ化セレネニルが単体ヨウ素とジセレニドに不均化しやすいという性質を利用し、反応の触媒化にも成功した。巨大空孔型配位子の開発に関しては、ナノサイズの空孔をもつ新規なアリールジメチルホスフィン配位子を開発した。パラジウム錯体の結晶構造解析の結果から、これらの配位子が、意図したとおり金属中心を周縁部から包囲しつつその周辺に反応場を確保していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヨウ化セレネニルの特性を活かした新規なアルケン合成反応を開発し、酵素反応の活性中間体を有機合成へ応用するという目的を具現化した。また、実施計画通り、新規な空孔型ジアルキルアリールホスフィンの開発を行った。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られた知見を応用し、ヨウ化セレネニルの特性を活かした新規な触媒的環化反応の開発を推進する。また、次に検討対象とする生体反応活性種として、システインと活性窒素種との相互作用により生成すると提唱されている活性中間体に着目し、その反応性を解明するとともに効率的物質変換反応への応用を目指す。前年度に開発したホスフィン配位子については、その構造的特性を活かした触媒反応の開発を進める。
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