研究領域 | 直截的物質変換をめざした分子活性化法の開発 |
研究課題/領域番号 |
22105011
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
後藤 敬 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70262144)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 有機化学 / 物質変換 / 分子活性化 / 活性種 / 分子空孔 |
研究概要 |
生体反応に含まれる反応活性種は、基質以外の分子の活性化にも有用と考えられ、未開拓の反応性の宝庫と言える。従来その不安定性のために、人工系での合成が困難であった生体反応中間体を安定に合成し、有効に活用することができれば、新たな分子活性化法が開発できるものと期待される。今年度、新たに開発したアミノ酸含有巨大分子キャビティを活用することで、生体内において重要な役割を果たしている小分子の活性化、特に活性窒素種が関与する反応過程についてモデル研究を行った。ニトログリセリンをはじめとする硝酸エステルは、顕著な血管拡張作用を有するために狭心症などの特効薬として古くから用いられている。システインチオニトラートは、硝酸エステルが生体内で活性化される際に中間体として生成すると提唱されている。しかし、この生体内活性化の作用機序については、硝酸エステルが最終的に一酸化窒素に変換されること以外は実験的根拠に乏しく、提案されてきた化学変換過程についても推測の域を出ていない。今回、ナノサイズのキャビティ内にシステインユニットを導入した新規な巨大分子空孔を活用することで、システインチオールと硝酸エステルとの反応によりシステインチオニトラートが生成することを実証することに初めて成功した。さらに、システインチオニトラートがチオールに対するニトロソ化剤として機能し、S-ニトロソチオールを与えることを実験的に示すとともに、その詳細な反応機構を明らかにした。S-ニトロソチオールは生体内で一酸化窒素供与体として機能することから、今回得られた結果は、システインチオールが関わる硝酸エステルの活性化機構を解明する上で、重要な基礎的知見と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生化学的にきわめて重要な分子活性化過程である硝酸エステルの活性化機構について、その中間体であるシステインチオニトラートの合成に初めて成功するとともに、提唱されてきた化学反応過程を実験的に示すことに成功しており、ほぼ予定通りの進捗状況と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
生体機能において重要な分子活性化過程のモデル研究を引き続き推進するとともに、酵素反応中間体の有機合成反応への応用を図る。さらに、新規な巨大分子空孔型配位子を開発し、二酸化炭素や亜酸化窒素など小分子活性化へ展開する。
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