生体内での生合成や代謝反応は、いわゆる直截的な有機合成反応の基本例である。その効率的な反応には生体触媒である酵素の関与が必須である。化学の立場で直截的反応を設計する際に、酵素を目的に応じて改変して利用することは、有効なアプローチの一つと言える。我々は、タンパク質の空孔に非天然の金属錯体を挿入することにより、天然の酵素では実現が難しい反応(C-H結合の活性化、C-C結合形成、水素発生等)の実施や反応の立体選択性の向上などに結びつくことを本課題研究で明らかにした。さらに、タンパク質空孔の反応場を遺伝子操作によってチューニングすることにより、反応の活性や選択性の更なる制御も可能となることを示した。
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