計画研究
日本の気候は,日本を囲む縁辺海の海洋の影響が強く示唆され,大気と海洋の変動を総合的に評価する必要がある.我々は班縁辺海の海流・水温の微細構造が,雲・降水系など大気の中小規模現象の組織化を通じて, 我が国の地域気象に与える影響する過程を明らかにする. その評価を大気海洋結合モデルの実験や衛星データ,現場観測データを用いて行うことが本課題の目的である.25年度は,下記の研究を実施した.1)海洋中小規模擾乱が雲解像から中小規模の気象に与える影響を調べるために,雲解像モデル(CReSS)や,WRFモデル等を用いて様々な数値計算を実施した. 2)黄海は非常に浅い海である.よって冬季モンスーンの寒気の影響により,周囲の海よりも低温になる.黄海・東シナ海における海洋混合層の熱収支の年サイクルを計算することで,冬期の黄海の低温状態が梅雨期前期まで継続し,周囲に対して低温の海が原因で高気圧が発生,それが梅雨に影響を及ぼすという仮説を立て,この高気圧を「黄海高気圧」と名付け,その解析の成果を論文発表し,その論文成果が気象学会から受賞に至った. 3)日本海水温がWP-like patternに及ぼす影響のメカニズムを提唱した. 4)東シナ海上での梅雨前線のラジオゾンデ観測とその事例の数値実験を行った.その結果,黒潮が梅雨を強化することが示唆され,その成果の論文を投稿した. 5)三隻同時観測による,海洋前線を挟むラジオゾンデ観測に拘わり,その解析を行い,低海水温側が高気圧偏差,高海水温側が低気圧偏差となり,風もそれに対応した風速となった.6)縁辺海埋め立てた数値実験を開始した.
1: 当初の計画以上に進展している
ラジオゾンデ観測データを用いて,黒潮親潮間の海洋前線や,夏季のオホーツク海の低海水温海域が,中小規模大気へ及ぼす影響についての解析や,数値モデルの観測事実の再現性の検証を実施など,当初通り順調に進んでいる.それらに加え次のような特筆すべき成果が得られた.2011年6月に長崎丸による東シナ海での観測船に台風中心付近が通過した.我々は急遽ラジオゾンデ観測を実施した.その結果,通常とは逆の二次循環(中心付近に下降流,下層付近の中心から外へ向かう流れ)が台風内に存在していることを発見した.この逆二次循環が台風の発達を抑えたのかもしれないことが示唆された.これは当初の想定には無かった成果である.また,小中高校の先生と生徒への講演,気象学の一般向けのベストセラー本の出版と多数のテレビ出演(茂木 JAMSTEC,吉岡 東北大学,立花 三重大学),高校での出前授業やサイエンスカフェ,講演会多数(立花 三重大学),2016年地学オリンピック三重大会に向けての高校や教育委員会への布教活動(立花 三重大学)など,アウトリーチ活動を活発に行った.これら活動も当初の想定には無かった.
最終年度に向けて,研究成果を論文としてまとめることは言うまでもない.初心に返り,研究成果の科学的発信を最重要視したい.それに加えて,最終年度では,25年度以上にアウトリーチ活動を実施したい.我々は高校との連携を通じて研究成果の少年少女そして,父母への発信も強化したい.google adwordsなどのネット媒体を利用した研究成果の宣伝も積極的に実施していきたい.
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (46件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
Journal of Geophysical Research Atmosphere
巻: 119 ページ: 1277-1291
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Journal of Geophysical Research
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