研究領域 | 気候系のhot spot:熱帯と寒帯が近接するモンスーンアジアの大気海洋結合変動 |
研究課題/領域番号 |
22106006
|
研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
野中 正見 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (90358771)
|
研究分担者 |
久保川 厚 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (00178039)
佐々木 英治 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, サブリーダー (50359220)
中野 英之 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 主任研究官 (60370334)
細田 滋毅 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー代理 (60399582)
田口 文明 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (80435841)
|
研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
|
キーワード | 海洋物理学 / 大気海洋相互作用 / 海洋生態系 |
研究概要 |
黒潮続流に代表される東向きジェットの流下方向への平均場並びに擾乱場の構造変化の上流プロファイルと下流での条件に対する興味深い依存性を、準地衡流2層モデルから見出した。また、海洋大循環モデル出力から黒潮続流の上流(下流)で北向き(南向き)の渦による渦度フラックスが生じていることを示した。これは下流の渦度フラックスに伴う渦度偏差が黒潮続流の南北再循環の強化をもたらすことを示唆する。 同化再解析データを用いた解析から、日本の沿岸水位と黒潮・黒潮続流の変動に密接な関係が、また、高解像度沿岸モデルを用いた事例解析から伊豆諸島付近の黒潮変動の励起した沿岸波動がこの水位変動の直接的な原因である可能性が示唆された。一方、黒潮続流がShatky Rise東方で分岐する現象について、黒潮続流がShatky Riseにぶつかる際に生じるRossby lee waveとそれが崩れることによる渦渦相互作用の重要性が示された。黒潮・黒潮続流域では上記のように渦が重要な影響を持つため、経年変動に顕著な自励変動が生じるが、対照的に太平洋熱帯域では外力によって海洋変動がほぼ一意に決まることも示された。 更に、海洋生態系モデルを組み込んだ水平解像度1/30度の北太平洋域超高解像度海洋シミュレーションの2年間のデータセットを構築し、黒潮続流領域において大気擾乱が活発な冬季にサブメソスケールが活発になる季節変動に注目し、物理場、生態系の解析を開始した。 一方、北太平洋中央部の風系変動を模した風応力偏差を与える大気海洋結合モデル実験を行い、人為的に南北変位させた海洋前線に対する海面水温、熱フラックス、降水に有意な局所応答を確認した。また、黒潮続流域における夏季海洋亜表層水温の経年変動について、観測データ解析を基に夏季の正味熱フラックスに対する海洋亜表層への熱浸透についての解析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、黒潮・親潮続流循環系の形成・変動機構とその大気場や海洋生態系への影響を明らかにすることであり、その達成のために、①黒潮・親潮続流循環系の形成・変動メカニズム、②海洋変動の海洋生態系への影響、③大気場への影響、④海盆規模の混合層分布とその変動、という4主要研究テーマを総合的に推進している。研究実績の概要に示したように、各テーマに沿って着実に進行している。本研究課題の特徴である高解像度海洋大循環モデルを用いた海洋渦が海洋循環場へ及ぼす影響についての様々な解析を推進し、大きな理解の進展に繋がっている。更に、より小さいサブメソスケール現象とその影響に注目した解析も開始すると同時に、大気場への影響を調べるための実験も開始し、大気変動によって生じた黒潮・親潮続流域の変動が少なくとも局所的には有意な大気変動を生じさせることを示し、大気海洋間のフィードバック環の一端を明に示した。
|
今後の研究の推進方策 |
東向きジェットの流下方向への平均場等に対する、上流・下流での条件に対する興味深い依存性が見出されたが、その理論化および現実海洋への適用にはより詳細な解析を進める必要がある。また、黒潮・黒潮続流の形成・変動に対する渦の効果について総括的な見方をまとめて行く必要がある。 黒潮続流の経年変動、自励的変動の生態系への影響に関する解析を更に推進するとともに、H25年度までに構築した水平解像度1/30度の北太平洋域超高解像度海洋シミュレーションの2年間のデータセットを用いて、海洋のサブメソスケールを含むスケール間相互作用が海洋生態系に及ぼす影響についての解析も推進する。また、H25年度に準備を進めた高解像度観測データセット作成について、H26年度は公開に向けて更に作業を進める予定である。 H26年度は最終年度であり、本研究課題で全体としてどのような像が新たに得られたのかをまとめて行くとともに、今後発展させるべき方向性についての議論を進める必要がある。
|