計画研究
①異なる緯度に水温前線帯を置いた大気大循環モデルAFESによる「水惑星」実験から,ストームトラック活動が強化され,渦駆動される偏西風が中緯度へシフトする環状モード変動の正位相においては,それらの緯度が水温前線帯の緯度に敏感な一方,負の位相においては水温前線帯の緯度に関わりなく両者は40度付近に位置する傾向を見出した.後者の緯度は水温勾配を緩和した状態でも実現されることから,環状モード変動が移動性擾乱と偏西風との力学的相互作用を反映したレジームと水温勾配よる熱力学的強制を反映したレジーム間の遷移を表す変動であり,中緯度大気の平均状態は両レジームの重ね合わせとして決まることが見出された.②気象研究所の大気モデルにおいて成層圏に11年周期の西風強制を与える実験を行い,大気海洋結合モデルに同様な強制を与えた実験,並びに大気モデル,結合モデルそれぞれの基準実験の結果との北極振動の時間変動特性の違いを評価した.③海洋・海氷・大気観測データ,及び大気-海洋-海氷結合モデルCFESの長期積分データに共通して,南半球環状モード変動(SAM)と海面水温10年規模の周期的な結合変動が見られ,周極流に伴う海洋前線帯における負の海面水温偏差にSAMに伴う偏西風強化が対応することを見出し、この結合変動への海洋の自然変動の重要性が示唆された.④初夏に梅雨前線へと熱帯からの下層の暖湿気流が東シナ海上を流れる時,沖縄西方沖の黒潮流軸に沿って対流雲が持続的に組織化される事例を発見し,黒潮に伴う水温極大が暖湿気流の対流不安定性の維持に本質的に重要であることを領域大気モデル実験により確認した.⑤2011年暖候期に北西太平洋で観測された顕著な暖水偏差を大気大循環モデルに与えて予報再現実験を行い,偏西風とストームトラックが中緯度に南下する10月に現実的な高気圧性循環応答が再現されることを確認した.
2: おおむね順調に進展している
気候系の”hot spot”を特徴づける表層海洋・対流圏・成層圏の鉛直結合系が気候系の形成と変動に果たす多面的な役割に関する重要な成果を多くの論文にまとめ,米国気象学会・地球物理学連合専門誌に発表した.大規模な相互作用のみならず,黒潮が対流性降水システムの組織化に果たす役割等,より地域的なスケールでの海洋からの影響についても研究成果が得られている.
概ね順調に成果が挙がっているため基本的には当初の予定通り進めるが,震災に影響が未だに残る全球大気再解析の追加データの作成や24年夏に実施した集中観測に関連した数値実験を一層加速するよう努める.
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すべて 雑誌論文 (26件) (うち査読あり 20件) 学会発表 (82件) (うち招待講演 13件) 図書 (2件) 備考 (2件)
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