研究領域 | 気候系のhot spot:熱帯と寒帯が近接するモンスーンアジアの大気海洋結合変動 |
研究課題/領域番号 |
22106010
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三寺 史夫 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20360943)
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研究分担者 |
中村 知裕 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (60400008)
木村 詞明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (20374647)
小木 雅世 (独)海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (50392957)
金子 正美 酪農学園大学, 農学生命科学部, 教授 (00347767)
浮田 甚郎 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80272459)
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キーワード | オホーツク海 / 北極海 / 大気海洋海氷相互作用 / オホーツク海高気圧 / 下層雲 |
研究概要 |
オホーック海・北極圏の大気海洋海氷相互作用の解明を目指し、以下を行った。 1.ロシア水文気象研究所(FERHRI)と協力し、ベーリング海およびオホーック海における新たな海洋データセットを作成した。その結果、ベーリング海西部の表層(0~約150m深)を起源とし、東カムチャツカ海流を経由してオホーツク海および親潮域の中層(約150~300m深)にかけて伝播する塩分の十年規模変動を見出した。この塩分変動に対し、アリューシャン低気圧の変動がさらに数年先行していることも分かった。 2.地球シミュレータ全球結合モデル(CFES)ではオホーツク海海氷面積に顕著な十年規模変動が再現されており、秋から晩冬にかけての季節進行の特徴が観測されたものとよく対応していることがわかった。CFESと観測データを併用してさらに解析したころ、この経年~十年規模変動は、夏から秋にかけて持続する北極海東シベリア沿岸の海氷変動から強く影響を受けていることが明らかとなった。北極海沿岸で多氷のとき東シベリア沿岸に高気圧が生じ、それが晩秋の寒気移流を強化してオホーツク海に多氷をもたらすことが見出された。 3.冬季、北海道オホーツク海沿岸ではしばしば帯状雲が形成され、道東オホーツク海側に降雪をもたらす。領域モデルを用いた数値実験から、その形成には北海道オホーツク沿岸の陸風(陸上での冷却による地上高気圧偏差に伴う風)に加えて、サハリンで冷却された気塊の移流による地上高気圧偏差の形成が重要であることを明らかにした。 4.夏季の北日本気候に大きく影響するオホーツク海高気圧と下層雲の相互作用を、領域大気シミュレーションおよび結合シミュレーションにより再現した。下層雲が発達すると、日射の遮蔽や放射冷却を通して海面水温の低下を引き起こし、下層雲-海面水温フィードバックが働きうることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
FERHRIの海洋データセットには水温・塩分データが既存のものに比して2倍以上含まれており、特に西ベーリング海やオホーツク海東部などデータ空白域での増加が著しかった。そのためこれまで情報不足により仮説にとどまっていた海洋変動の経路が、明瞭な時系列として見出されたことは特筆すべき成果と考える。また、オホーツク海の海氷変動を特徴付ける要因の一つは秋季における大陸からの寒気移流であるが、それを引き起こす原因として北極海東シベリア沿岸海氷の変動が重要であることを発見し、現在データ解析、数値実験の両面から解明しつつある。このように、オホーツク海・北極圏の大気海洋海氷相互作用に関する重要な知見が見いだされ、その解明に対し明瞭な道筋がついたため、当初計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は(1)環オホーツク圏の気候システム、(2)オホーツク海および北極圏の大気海洋海氷相互作用、(3)夏季のオホーツク海高気圧と下層雲を伴う相互作用、の解明である。(1)に関してはベーリング海の変動要因に特に注目し、大気再解析データの解析と海洋数値モデルによる実験を主に用いて研究を進める。(2)に関しては北極海の海氷漂流データセットの解析等から海氷変動の季節進行を調べる。また、全球結合モデルを用いた数値実験により北極海海氷の変動に対する大気応答とオホーツク海海氷への影響を明らかにする。(3)に関しては、過去にオホーツク海で実施したラジオゾンデ観測結果と大気モデルの結果を比較し下層雲形成メカニズムの解明を目指すとともに、下層雲がある場合の海表面水温、海面気温の形成過程を数値モデルにより明らかにする。項目(1)、(2)は新学術領域研究「中緯度海洋と気候(略称)」AO3-8班(代表:中村)、項目(3)はAO1-2班(代表:立花)と連携して実施する。
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