計画研究
本研究は、バイオミネラルの形成プロセスにみられる「分子制御」による融合マテリアル創製のための基礎技術の確立および高機能性の付与を目指している。平成23年度は、平成22年度の成果を踏まえ、融合マテリアルの構造制御と、融合材料を機能化する液晶材料について研究した。まず、ザリガニ由来のペプチドに着想を得た人工ペプチドを用いた炭酸カルシウム結晶成長について研究した。遺伝子工学的手法を用いてペプチドの構造を変化させ、ペプチド中の酸性アミノ酸の連続配列の長さが、形成する結晶の配向に大きく影響することがわかった。さらに、有機合成的手法でオリゴペプチドやポリペプチドを合成し、それらを利用した結晶配向の制御を達成した。これは、分子制御された自己組織化によって機能を生み出す階層的な融合構造を作製する研究目的の上で重要な成果である。融合マテリアルに機能性を付与する分子として、発光性や電気伝導性を示す液晶材料を開発した。発光性液晶は、ピリジニウム骨格やピリミジニウム骨格を含むトリポッド型の構造をしたイオン液晶であり、分子構造のチューニングによる多様な発光色の実現に成功した。また、導電性液晶として、電子アクセプター性のコア部とドナー性のアーム部からなるカラムナー液晶を開発した。カラムの中心部を電子が、周辺部をホールが流れるユニークな電気伝導性を示した。これらは機能性部位の自己組織化による高機能性の付与という研究目的の上で重要な成果である。また、液晶性機能融合材料として、低分子ゲル化剤とネマチック液晶からなるディスプレイ材料について、研究を行なった。ランダムな分子ファイバーが形成するミクロセグメント中のネマチック液晶は良好な光散乱特性を示した。また、ゲル化剤に重合基を導入し、光重合によってファイバーを重合することにより、分子ナノファイバーの安定化し、さらに電気応答特性を向上させることにも成功した。
2: おおむね順調に進展している
バイオミネラルの形成にならい、結晶成長の自己組織化を制御する技術の開発、および刺激応答性化合物の開発はおおむね順調に進んでおり、共同研究も活発に行なわれている。
本領域に参加している研究代表者との密接な議論を重ねながら共同研究をさらに推進し、融合マテリアルの構造制御・高機能化のための刺激応答性を有する新しい有機分子・高分子を設計・合成する。計算機科学的手法も利用しながら、これまでに主に対象としてきた多様な結晶の構造を「分子制御」する技術の確立と一般化を進め、同時に機能性部位を有する制御分子の開発を進めることで、融合マテリアルのさらなる高機能化を進める。
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