研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 隆史 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70214377)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | ハイブリッド材料 / 機能性高分子 / 融合マテリアル / 自己組織化 / 液晶材料 |
研究概要 |
本研究は、バイオミネラルの形成プロセスにみられる「分子制御」による融合マテリアル創製のための基礎技術の確立および高機能性の付与を目指している。平成25年度は、これまでの成果を踏まえ、セルロースナノファイバーを用いる新規融合マテリアルの開発と、シミュレーションによる融合マテリアルの形成機構の解明について研究した。 自然界に見られる有機無機複合材料(バイオミネラル)の形成機構を考察するために、本年度はマグネシウムイオンを制御分子に用いる融合マテリアルの合成手法の確立と計算科学による形成機構の考察を行った。マグネシウムイオン存在下、炭酸カルシウムの過飽和水溶液を作製すると、マグネシウムイオンがアモルファス炭酸カルシウムを安定化し、PVA上に薄膜状の炭酸カルシウムが形成することを見出した。また、実験と同じ条件のシミュレーション計算を行うことにより、結晶前駆体中においてマグネシウムイオンが結晶前駆体を安定化している事がわかった。 さらに超分子構造の動的な性質についても調べ、ポリロタキサンの高分子効果が形成途中に経由する無機結晶前駆体の安定に寄与していることを明らかにした。さらにバイオミネラルに学ぶ透明かつ強靱な融合材料の開発に成功した。セルロースナノファイバーとアモルファス炭酸カルシウムが分子レベルで融合した材料を合成し、セルロースナノファイバーの表面を修飾することで力学特性や光学特性が大きく向上することを明らかにした。 また、動的機能を有する制御分子の開発のため発光性分子集合体の構築に関する研究を行い、溶媒の極性に応答して発光する分子を設計・合成し、その発光挙動をA03長谷川グループと共同で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオミネラルの形成にならい、透明かつ強靭な融合マテリアルの開発、および刺激応答性化合物の開発はおおむね順調に進んでおり、共同研究も活発に行なわれている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度を迎えるにあたり、本領域に参加している研究代表者とのさらなる密接な議論を重ねながら共同研究をさらに推進し、融合マテリアルの構造制御・高機能化のための刺激応答性を有する新しい有機分子・高分子を設計・合成する。これまでに主に対象としてきた多様な結晶の構造を「分子制御」する技術の確立と一般化を進め、計算機科学的手法も利用しながら、バイオミネラリゼーションに学ぶ形成手法の開発を進め、同時に機能性部位を有する制御分子の開発を進めることで、融合マテリアルのさらなる高機能化を進める。
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