本研究は、バイオミネラルの形成プロセスにみられる「分子制御」による融合マテリアル創製のための基礎技術の確立およびその高機能化を目指している。平成26年度は、これまでに得られた融合マテリアルの形成機構に関する知見をもとに、炭酸カルシウム結晶前駆体に着目した自然調和型構造材料の創製、および刺激に応答して機能を発現する動的融合機能材料の開発などを行った。 薄膜状融合マテリアルのさらなる構造制御を目指し、温度に応答して相変化する高分子ブラシを用いる融合マテリアルの開発を行った。Poly(N-isopropylacrylamide)高分子ブラシをポリアクリル酸存在下、炭酸カルシウム結晶成長溶液に浸漬すると、薄膜状のバテライトが成長した。さらに結晶成長温度の違いによって、結晶のモルホロジーや結晶配向が大きく変化した。20℃で結晶成長を行うと、結晶c軸が基板に対して垂直に配向した薄膜が得られ、40℃ではc軸は放射状に配向する。この現象は、感温性高分子ブラシ表面の親水/疎水構造変化によると考えられる。高分子ブラシの表面が炭酸カルシウム薄膜のより安定な結晶面を誘起するため、このような明確な違いが生じたと考えられる。 環状カーボネート部位を分子端に有するスメクチック液晶を合成し、そのイオン伝導性を測定すると同時にこれら新規に設計したイオン伝導性液晶を電解質として用い、無機電極材料と複合・融合化によりリチウムイオン電池の開発や色素増感型太陽電池の開発に成功した。特に、色素増感型太陽電池においては、液晶電解質と電極システムとの複合化により100℃以上での変換を達成した。さらに融合マテリアルのためのイオン伝導性液晶を新たに開発した。アゾ部位を液晶部位に導入し、光照射によるイオン伝導性液晶の配向制御を達成した。
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