研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107004
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
灘 浩樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (90357682)
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キーワード | ハイブリッド材料 / 機能性高分子 / 融合マテリアル / 結晶成長 / 計算物理 |
研究概要 |
平成23年度は、有機分子による無機結晶の成長制御機構の研究の中で、特に有機分子の結晶表面・界面吸着挙動および結晶核生成前駆体に関する計算科学研究を重点的に実施した。研究成果の概要は、以下の通りである。 1.アスパラギン酸によるカルサイト結晶成長制御機構の研究 アスパラギン酸によるカルサイト結晶成長制御機構を分子レベルで理解することを目的とした分子動力学計算を、昨年度に引き続いて実施した。アスパラギン酸の結晶表面吸着は、表面で秩序配列した水分子層との静電相互作用および表面との静電相互作用とのバランスに支配され、カルサイト(104)面上では安定吸着構造が複数存在することがわかった。また、各吸着構造の安定性を自由エネルギーにより定量的に評価した。 2.昆虫不凍タンパク質の示すハイパーアクティビティの研究 極めて高い氷結晶成長抑制効果を示す昆虫不凍タンパク質の機構は、融合マテリアル分子制御法開発のヒントとなる。本研究では、昆虫不凍タンパク質による成長抑制機構の分子動力学計算解析を実施した。タンパク質のスレオニン配列面が氷に接触することにより安定に界面吸着すること、成長抑制は結晶界面先端の局所的な融点降下により説明できることがわかった。また、氷界面上における安定吸着構造は複数存在することが判明した。このことは、ハイパーアクティビティを生じさせる要因となっている可能性がある。 3.炭酸カルシウムアモルファス凝集体構造の研究 炭酸カルシウム結晶核生成前駆体であるアモルファス凝集体構造の分子動力学解析を実施した。アモルファス中にも局所的には結晶イオン配列構造、特にバテライト結晶型のイオン配列構造が形成されることがわかった。また、マグネシウムイオンの添加により結晶イオン配列の形成頻度が減少することもわかってきた。これらの研究成果は、不純物による核生成制御法を検討する上での基盤的知見となり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は全般的に計画通りに進行しており、研究成果発表も着実に行うことができている。また、領域内における共同研究なども順調に開始できているため、本研究課題は概ね順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は今後も当初の計画に従って遂行していく。誌上発表や口頭発表などを通じて成果発信や議論の機会を増やしていく、また領域内の実験等との共同研究を積極的に実施していくなどし、推進していく計画である。
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