研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107004
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
灘 浩樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (90357682)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハイブリッド材料 / 機能性高分子 / 融合マテリアル / 結晶成長 / 計算物理 |
研究実績の概要 |
平成24年度は、バイオミネラリゼーションにおいて代表的な炭酸カルシウムを例とした結晶成長制御機構の研究として、アスパラギン酸によるカルサイト結晶表面ステップ模様形成機構および炭酸カルシウム結晶核生成前駆体構造の不純物制御に関する研究を重点的に実施した。 1. アスパラギン酸によるカルサイト結晶表面ステップ模様形成機構の研究 アスパラギン酸は、カルサイト結晶(104)面の成長において形成する鈍角ステップと鋭角ステップのうち、鋭角ステップエッジにのみラフニング模様(凹凸模様)を形成させることが知られている。本研究では、このラフニング模様形成機構を分子レベルで解明することを目的とした分子動力学シミュレーションを実施した。シミュレーションの結果、アスパラギン酸が鋭角ステップ先端のみに選択的に吸着すること、またそれは鋭角ステップ周辺の水の構造が鈍角ステップ周辺とは異なることに由来することがわかった。本研究成果は、融合マテリアル分子制御機構を定性的に明らかにするための基礎的知見に相当するものである。 2. 炭酸カルシウム結晶核生成前駆体構造の不純物制御の研究 炭酸カルシウム結晶核生成前駆体であるアモルファス凝集体構造の分子動力学シミュレーション研究を昨年度に引き続き実施した。本年度は特に、マグネシウムと水分子の添加によって前駆体構造がどのような影響を受けるかを重点的に解析した。本研究の結果、前駆体中のバテライト結晶状の局所構造形成がマグネシウムイオンの添加により抑制されること、また水分子添加によりモノハイドロカルサイト結晶状の局所構造形成が促進されることが定性的にわかってきた。これら不純物による前駆体構造変化は、現実の炭酸カルシウム結晶多形とも密接に関係していると思われ、融合マテリアル構造形成制御法を検討する上でも重要な知見と位置付けられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は全般的に計画通りに進行しており、その成果発表も進んできている。領域内における共同研究やその成果発表なども順調に進んでできているため、本研究課題は概ね順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は今後も当初の計画に従って遂行していく。誌上発表や口頭発表などを通じて成果発信や議論の機会を増やしていく、また領域内の実験等との共同研究をさらに実施していくなどし、推進していく計画である。
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