平成26年度は、既に実施した炭酸カルシウムアモルファス前駆体構造研究の次のステップとして、さまざまな炭酸カルシウム結晶とその前駆体との界面における結晶成長速度のマグネシウム添加依存性に関する計算機シミュレーション研究を領域内共同研究として実施した。その結果、マグネシウム添加により成長速度が小さくなること、その中でも特にバテライト結晶の成長速度が小さくなることがわかった。この研究により、バイオミネラリゼーションの基本的現象であるマグネシウム存在下での炭酸カルシウム結晶構造形成機構の理解が深まった。 また本研究において、成長速度のマグネシウム添加依存性は結晶の面方位により大きく異なることもわかった。その結果より、結晶構造形成を制御するためのテンプレート構造の特徴を考察することができた。同様にして、有機鉱物結晶表面上における氷結晶核生成のシミュレーション結果からも、テンプレート構造と結晶構造形成との関係を考察した。以上の研究により、融合マテリアル形成の制御分子を設計デザインするためのヒントが多く得られた。 本年度はさらに、既に実施したアスパラギン酸によるカルサイト結晶成長制御および不凍タンパク質による氷結晶成長制御の研究に引き続き、グリコール酸存在下での二酸化チタンルチル結晶の形態制御機構の計算機シミュレーション研究を領域内共同研究として実施した。その結果、グリコール酸の結晶表面への吸着構造やその安定性が結晶面方位により大きく異なることが明らかとなるなど、形態制御機構を明らかにする上で重要な知見が多く得られた。 また本研究において、炭酸カルシウム結晶へのアスパラギン酸吸着の場合と同様に、グリコール酸の結晶表面吸着は表面の水の影響をとても強く受けることがわかった。これら一連の研究結果を総合し、結晶表面の水の影響を考慮した結晶成長の分子制御機構の物理モデルを考察した。
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