タンパク質やペプチドは、厳密に定義された分子構造とそれに基づく高次構造を有する機能性分子であり、バイオミネラルの形成に最も直接的に関与する有機物質である。本研究では、生体組織に強靭さ・しなやかさを与える構造タンパク質(エラスチン・コラーゲン等)のコア配列に着目して、分子制御された融合マテリアルを構築する。遺伝子工学技術により、コア配列中に無機前駆体と相互作用するアミノ酸を組み込み、無機物としなやかなハイブリッド体を形成させる。さらに、異種有機材料との相互作用サイトの創出により、領域内で作製される合成高分子材料や有機組織体(液晶・ゲル等)との融合を行い、自然調和型構造材料・動的融合機能材料の創製を目指す。 平成22年度は、融合マテリアルの構築に用いる機能性ポリペプチドである、2種類のエラスチン由来ポリペプチドを作製した。これらのポリペプチドは、エラスチン配列と自己集合配列とを連結したブロック構造を有しており、C末端には無機物との複合化に有効なオリゴヒスチジン配列を有する。自己集合配列を片末端に有するジブロック型、および両末端に有するトリブロック型ポリペプチドのそれぞれが、水溶液中において形成する自己集合構造について調べた。これらのポリペプチドは、温度刺激によって凝集し、アミロイド様の二次構造を有する数珠状組織体を形成した。トリブロック型のものはより長い鎖長を有していた。自己集合を行う温度や溶媒によって、様々に異なるモルフォロジーを呈することを見出している。
|