研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鳴瀧 彩絵 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10508203)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハイブリッド材料 / 機能性高分子 / 融合マテリアル / 生体材料 / 高分子構造・物性 |
研究実績の概要 |
タンパク質やペプチドは、厳密に定義された分子構造とそれに基づく高次構造を有する機能性分子であり、バイオミネラルの形成に最も直接的に関与する有機物質である。本研究では、生体における重要な構造タンパク質であるエラスチン、コラーゲン等に着目して融合マテリアルの構築を行う。すなわち、構造タンパク質に見られるアミノ酸配列を遺伝子工学的に改変した多機能性ポリペプチドを作製したのち、ありふれた無機素材・高分子素材や領域内で得られる物質群と分子制御プロセスを介して融合する。 本年度は、天然エラスチンのアミノ酸配列に見られる二種類の特徴的な疎水性ドメイン構造を単純化した二重疎水性ポリペプチドを新たに作製し、これがナノファイバーやナノシート状へと自己集合することを見出した。これらの自己集合体は血管や皮膚のような生体組織にも見られる構造であることから、バイオマテリアル応用に向けて有用な素材を構築できたと言える。NIH3T3 細胞を用いた細胞毒性試験の結果、このナノファイバーがバイオマテリアルとして十分な生体適合性を有していることも確認している。エレクトロスピニング法を用い、二重疎水性ポリペプチドとゼラチンからなる融合足場材料の作製にも成功した。また、当初の計画にはなかったが、領域内での研究打ち合わせにより共同研究が発足し、無機ナノ粒子の新しい自己集合現象を見出すに至っている。たとえば、シリカに吸着できる両親媒性のブロックコポリマーを、単分散シリカナノ粒子のコロイド溶液に添加すると、ナノ粒子の直径が 15 nm の場合には二次元のリング状に、30 nm の場合は一次元の数珠状に自己集合する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画した研究が順調に進行しており、研究遂行上で生じた問題点はない。特に、エラスチン由来ポリペプチドからのナノファイバー形成に関して、融合マテリアル形成用の構成要素となる優れた素材が構築できたばかりでなく、予期していなかった新しい自己集合現象も見出されており(論文発表済)、学問的見地からも今後大きな発展が見込まれる。さらに、領域内での研究打ち合わせを通じて、当初は計画していなかったナノ粒子の自己集合に関する研究が発足したが、大学院生を研究協力者として柔軟に参画させることより効果的に研究を進め、その成果を学会にて報告することができた。
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今後の研究の推進方策 |
以下の2課題について重点的に研究を進める。 (i) ヒト真皮を模倣したエラスチン/ゼラチン融合足場材料の創製:平成24年度までに作製に成功したエラスチン由来ポリぺプチドファイバーとゼラチンから構成される融合足場材料をエレクトロスピニング法により作製する。その生体適合性と力学特性の評価を行い、組織工学用の足場材料としての実用可能性を検討する。 (ii) 高分子による無機ナノ粒子の自己集合:共同研究により見出された、両親媒性ブロックコポリマーの存在下における無機ナノ粒子の特異な自己集合現象について、特に液相中での構造解析と系統的な実験により現象解明を進める。
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