研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107005
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鳴瀧 彩絵 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10508203)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | ハイブリッド材料 / 機能性高分子 / 融合マテリアル / 生体材料 / 高分子構造・物性 |
研究概要 |
タンパク質やペプチドは、厳密に定義された分子構造とそれに基づく高次構造を有する機能性分子であり、バイオミネラルの形成に最も直接的に関与する有機物質である。本研究では、生体組織に強靭さ・しなやかさを与える構造タンパク質(エラスチン等)に着目して融合マテリアルを構築する。遺伝子工学技術により、構造タンパク質の配列中に異種有機素材あるいは無機前駆体と相互作用するアミノ酸配列を組み込み、分子制御プロセスによりハイブリッド体を形成させる。これにより、特にバイオメディカル分野での利用を指向した自然調和型構造材料・動的融合機能材料を創製する。 これまでに、天然エラスチンのアミノ酸配列を単純化した新規なエラスチン様ポリぺプチド (Elastin-Like Polypeptide; ELP) を開発し、これが水中で温度刺激によって生体内に見られるようなナノファイバーへと自己集合することを報告してきた。平成25年度は、ELPのナノファイバー形成が有機溶媒であるトリフルオロエタノール (TFE) の添加によっても誘起されることを見出し、TFEの濃度とELPの二次構造あるいは集合構造との相関を明らかにした。ELPナノファイバーは構造均一性にすぐれ、分散液として取り扱えるという利点を有していたことから、これを構成要素とする融合マテリアル開発に着手した。再生医療に用いられる細胞足場材料は、生体における細胞外ミクロ環境を再現したものが望ましいという要請に着目し、ヒト真皮に見られるコラーゲン/エラスチン複合線維構造を模倣した足場材料の作製を目指した。これまでに、エレクトロスピニング法を用いてコラーゲンの変性体であるゼラチンとELPファイバーを共紡糸することにより、3次元多孔質構造を持つファイバー膜の作製に成功し、これが細胞毒性を示さないこと、および少量 (1 wt%) のELPファイバーの混合によりファイバー膜の弾性率が有意に制御可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規エラスチン由来ポリペプチドのより詳細な自己集合メカニズムを解明するとともに、構造均一性、溶媒への分散性等、材料学的観点からの有用性を示すことができた。このポリペプチドを素材とし、本研究課題の最終目標である「融合マテリアル」の創成と機能開拓が順調に進んでいる。また、当初の計画にはなかった共同研究も複数進行中であり、研究が大きく展開している。
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今後の研究の推進方策 |
以下の3課題について重点的に研究を進める。 (i) ヒト真皮を模倣したエラスチン/ゼラチン融合足場材料の創製:ELPポリペプチドファイバーの濃度を変化させてエレクトロスピニング法によりゼラチンと共紡糸を行うことにより融合足場材料を得る。各種顕微鏡法により詳細な構造解析を行うとともに、機能評価(力学特性試験および細胞毒性・増殖・分化試験)を行い、足場材料としての有用性を調べる。 (ii) 融合マテリアル作製用の新規ポリペプチド基板の開発:平成25年度までにエラスチン由来ポリペプチドを開発する過程において見出した平板状自己集合体を、無機結晶成長を制御するための新規テンプレートとして用いる。平板状自己集合体の構造解析を、原子間力顕微鏡やX線分析などによって進め、この結果をポリペプチド配列設計にフィードバックし、適切な官能基を有するポリペプチド基板を創出する。 (iii) 領域内先端材料と研究代表者の独自技術の融合による融合マテリアルの創製:平成25年度までに3グループ(A01下嶋、A02青島、研究代表者)の共同研究により行われた、精密合成高分子を用いた中空シリカナノ粒子の合成とシリカナノ粒子の自己集合について、詳細な構造解析と現象解明を進める。
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