昨年度までに、水中で自己集合して数珠状のナノファイバーを形成しうる新規なエラスチン類似ブロックポリペプチドの作製に成功した。このポリペプチドは温度応答性を有し、低温で分解する性質を示す。平成26年度は、リシン残基を含む架橋可能配列 (KAAK) をC末端に付加した新たなポリペプチドを作製した。水中で自己集合性ファイバーを形成させたのちに bis(sulfosuccinimidyl)suberate で架橋処理を施すことにより、低温域でもナノファイバー構造を安定に保持させることができた。また、昨年に引き続いて、ポリペプチドナノファイバーを利用した融合足場材料の作製に取り組んだ。細胞足場材料は生体内の細胞周辺環境に類似したものであることが望ましいという要件を受け、ゼラチン/ナノファイバー複合足場材料を作製した。これは、コラーゲンとエラスチンの複合線維構造からなるヒト真皮の細胞外マトリクス構造を模倣したものである。ヒト真皮におけるエラスチン量はコラーゲン量の数wt% 程度であることを考慮し、ゼラチンに対するナノファイバーの混合比を0.25~1 wt% としてその効果を検討した。ゼラチン溶液にナノファイバー分散液を混合してエレクトロスピニング法を施すことによりファイバー膜を得た。検討した濃度範囲において、均質な多孔質足場材料が作製できた。ごく少量 (0.5 wt%) のナノファイバーの添加によって、複合ファイバー膜の弾性率はゼラチン単独のファイバー膜と比較して低下し、最大ひずみの値は上昇した。足場材料の力学特性は細胞の増殖や分化に影響する重要な因子であるが、これを少量のポリペプチドファイバーの添加で制御できることが示された。 さらに、領域内共同研究として、精密合成したブロック高分子を制御分子として利用し、液相中でシリカナノ粒子を二次元のリング状構造体へと組織化することに成功した。
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