研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青島 貞人 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50183728)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | 融合マテリアル / 機能性高分子 / ハイブリッド材料 / 界面機能設計 / リビング重合 / シリカナノ微粒子 / リビングラジカル重合 / ナノリング配列 |
研究概要 |
平成25年度は新規融合マテリアルとして、自然界では作れないような傾斜構造、自己分解性、高選択性などを有する界面の創製を目指し、(1) 構造の制御された刺激応答性高分子の合成を行い、さらに (2) 無機材料との融合を設計した。具体的には、刺激応答性ポリマー/様々な形態のポリマー、選択的分解(切断)可能なポリマー、スマートフィルムの創製等を検討し、共同研究としては、融合プロセス由来の酸化鉄によるリビングカチオン及びラジカル重合、刺激応答性ブロックポリマーを用いたツボ型シリカナノ微粒子の創製、シリカナノ微粒子の配列制御の検討を進めた。 (1) 新しい融合マテリアル創製へ向けたベースポリマーの合成法開拓を引き続き行った。その結果、新しい配位子によるリビングカチオン重合開始剤系、オキシランとの共重合系、メタルフリー型開始剤系などが見いだされた。また、融合材料の足場材料となる選択的分解性を有する交互ポリマーとして、イオン性基や温度・pH応答性基を有するビニルエーテル類を用いた制御型交互共重合系により、比較的穏和な酸性条件下で選択分解される分子量分布の狭い刺激応答性ポリマーなどが合成可能になった。さらにこの系を応用して、分解性ユニットをリビングポリマーの特定位置に選択的に導入することにより、ポリマーを意のままに切断する手法の可能性を見いだした。一方、リビングカチオン重合により合成した様々なスチレン誘導体ブロックポリマーや星型ポリマーを用いて、高感度な刺激応答性フィルムの創製も検討した。 (2) アミノ基を有するシークエンスと疎水性シークエンスからなる両親媒性ブロックポリマーを合成し、それらを用いた有機/無機融合として、ツボ型中空ナノ微粒子を創製を行い、形態制御の可能性も検討した。一方、シリカナノ微粒子の配列制御により、ナノリング型配列の検討も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの達成度としては、25年度の交付申請書に記載した内容は着実に達成し、研究は順調に進展している。さらに、25年度の計画では、酸化鉄を用いた新しい融合マテリアル創製としてリビングカチオン重合の詳細な検討を挙げていたが、その検討以外に工業的にも有用なリビングラジカル重合の検討を新しく始めた。その結果、以下のように当初の計画以上に進展した。 天然に豊富に存在する鉄を用いた共同研究として、融合プロセスで作成した酸化鉄によるスチレンのリビングラジカル重合のチャレンジを始めた。具体的には、まずリビングラジカル重合の条件として添加剤の検討をするとともに、共同研究者から様々な構造(結晶)・形態を有する酸化鉄を提供していただき、スチレンのラジカル重合を試み始めた。その結果、触媒によっては重合が進行すること、および酸化鉄構造の違いにより重合挙動に変化が徐々に見えてきたため、更なる詳細な検討を進めることにした。 また、25年度の交付申請書に記載した内容以外に、中間審査(A+評価)において審査員からいただいたアドバイスとして、構造のさらなる解析および材料の形成機構をはじめとする原理解明があった。そこで、25年度の交付申請書には記載していなかったが、今後の分子設計や界面制御において構造解析は極めて重要と考え以下の検討も新しく始めている。 界面機能設計において重要と考えられるポリマー表面構造の検討として、α-メチルビニルエーテルのポリマーを用いて界面における置換基の効果を調べ始めた。さらに、その結果をメチルメタクリレートのポリマーと比較することを考えている。
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今後の研究の推進方策 |
26年度の研究の推進方策は、これまで示した研究計画の大きな変更はなく、最終年度として以下に示す2つの方向で自然調和型構造材料の設計・合成を進める。現在のところ、研究を遂行する上での問題点はない。 (1) 融合プロセスで作成した酸化鉄を用いたリビングラジカル重合: 本年度は工業的にインパクトの大きな制御ラジカル重合の検討を進める。具体的には、様々な構造(結晶)・形態を有する酸化鉄を用い、スチレンなどの重合を検討する。予備検討でこの系でラジカル重合が進行することがわかり、また、構造の違いにより重合挙動に変化が見られたので、反応が制御された重合が進行し分子量分布の狭いポリスチレンが得られる系や活性の高いリビング重合系を開拓する。 (2) 刺激応答性/自己分解性を有する融合マテリアルの創製: (2-1) 刺激応答性ユニットと選択的分解性ユニットを組み合わせることにより、様々な刺激応答性ビニルエーテル及び植物由来のアルデヒドを用いた交互共重合体を合成し、動的/刺激応答性および材料創製後の有機材料の除去を検討する。またこの系を応用して、ポリマーの特定な場所を選択的に切断する新手法も確立させる。(2-2) まず、アミノ基及び疎水性セグメントからなる両親媒性ブロックポリマーを用いて有機/無機融合によりツボ型中空シリカナノ微粒子を創製し、疎水性セグメントの構造を変えることによるツボの口径などの形態制御法を確立する。また、シリカナノ微粒子の配列やその集合挙動を検討し、自然界に無い配列・集合法を明らかにする。(2-3) 界面機能設計において重要なポリマー表面構造の検討として、ポリマー界面における置換基の効果などを詳細に調べる。
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