計画研究
本研究の主たる目的は、無機、金属、固体高分子などのハードで静態的な物質に、生体組織、液晶などのソフトで動態的な物質に特徴的に見られる高度に階層化した秩序構造を与えた新規な融合マテリアルを創製すること、および、その融合マテリアルが常温かつ温和な環境で創製できることを実証することにある。本研究では、自然調和型構造材料、すなわち1)配向欠陥のネットワークに異種物質を位置選択的に配列させた新規なナノ構造化融合マテリアル、および、2)秩序領域で無機物質等をテンプレート合成させた高秩序・高階層融合マテリアルを創製することを目的とする。平成23年度は、(1)無機物質と液晶との融合を目指し、サーモトロピック液晶中での無機結晶の成長を行った。サーモトロピック液晶は疎水性であるため、親水性の無機イオンを取り込むためクラウンエーテル誘導体を新規に合成し、イオンキャリアーとして用いた。ネマチック液晶中で炭酸カルシウムの結晶化を行ったところ、異方性のある結晶形態の形成が確認された。(2)水を溶媒とするリオトロピック液晶のキラル化を検討し、両親媒性物質、長鎖アルコール、キラル剤、水の適切な混合条件でリオトロピックキラル液晶が発現することが明らかとなった。(3)液晶の配向欠陥と高分子の長距離相互作用を液晶配向欠陥への高分子微粒子のトラップ挙動を直接観察を行い、共焦点走査型レーザ顕微鏡により液晶の配向欠陥に異種物質がトラップされることが直接観察された。特に、キラルネマチック液晶の螺旋構造とセル基板界面のアンカリング効果により形成した周期的線欠陥において高分子微粒子が周期的に配列することが観察された。
2: おおむね順調に進展している
目標としている有機分子高度組織体と無機結晶や高分子などの異種物質とが分子配向場における相互作用を利用してハブリッド化し、新たな融合マテリアルの創製に向けた研究成果が得られている。
今後も、予定通り研究を推進する。特に問題は生じていない。
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