研究概要 |
本研究では、磁性細菌のバイオミネラル結晶の形成に関与するタンパク質の分子制御に基づいた磁性融合マテリアルの創製を目的とする。磁性材料の磁気特性は、結晶の構造、形態、サイズに依存することからこれらの因子の制御が要求される。特に、バイオミネラルの最小単位であるサブミクロン~ナノメートルサイズの結晶の表面構造を制御する技術の開発に取り組む。本年度は、結晶形態制御のための基盤研究として、細胞内でのタンパク質の機能の解析、及びこれを発現制御することによる結晶形態やサイズに与える影響について解析を行った。mms6遺伝子の相同性組換え用プラスミドをAMB-1野生株に導入し、mms6遺伝子欠損株を構築した。シークエンス解析によりゲノム上におけるmms6遺伝子の欠損を確認し、更に粒子表面に存在するタンパク質プロファイルを解析し、Mms6タンパク質の欠損を確認した。次に、透過型電子顕微鏡を用いて、細胞内に合成される酸化鉄磁気微粒子の形態観察を行った。野生株では球状の粒子(切頂八面体)が合成されるのに対し、mms6遺伝子欠損株では長形の粒子の合成が確認された。粒子の長径及び短径を測定した結果、野生株ではそれぞれの平均が43nm,39nmであったのに対し、mms6遺伝子欠損株では32nm,22nmであり、明らかに形態の異なる粒子を合成することがわかった。更に、高分解能透過型電子顕微鏡による観察の結果、mms6遺伝子欠損株においては、野生株と比較して明瞭な結晶面を持たないものが多く存在することがわかった。以上の結果から、Mms6タンパク質はin vivoの実験系においても切頂八面体の酸化鉄結晶の形態制御に関与していることが示された。同タンパク質の発現制御によって、磁気微粒子のサイズや形態制御が可能なることが考えられた。
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