研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107009
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
新垣 篤史 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10367154)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハイブリッド材料 / 機能性高分子 / 融合マテリアル / 生体材料 / バイオテクノロジー |
研究実績の概要 |
本研究は、微生物におけるバイオミネラル結晶の形成に関与するタンパク質の分子制御に基づいた磁性融合マテリアルの創製を目的としている。磁性材料の磁気特性は、結晶の構造、形態、サイズに依存することからこれらの因子の制御が要求される。特に、バイオミネラルの最小単位であるサブミクロン~ナノメートルサイズの結晶の形態や表面構造を制御する技術の開発に取り組む。本年度は、磁性細菌の磁気微粒子表面に局在する3つのタンパク質 (Mms5, Mms6, Mms7) の機能解析を行い、これらが粒子の結晶成長の過程において形態やサイズの制御を担っていることを突き止めた。特にMms6タンパク質に関しては、タンパク質配列の部分欠損やアミノ酸の置換によって機能部位の同定を行った。また、磁性細菌内のMms7タンパク質の発現量を遺伝子レベルで制御することで、磁気微粒子のサイズや形態をチューニングすることに成功した。さらに、領域内のグループとの共同研究では、磁性細菌の酸化鉄結晶がリビング重合触媒として機能することを明らかにし、生体由来の磁気微粒子の新しい応用法を示した。この他の応用法として、磁気微粒子表面にアミノ基を導入することで、高効率なDNA回収用担体としての利用可能なことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究において、研究代表者は本新学術領域内の研究グループとの共同研究を積極的に実施してきた。特に、青島、今井らとの共同研究では、生体由来の酸化鉄磁気微粒子がリビング重合用の触媒として機能することをはじめて示し、その成果を論文として発表した(Chem Commun誌)。この他にも複数件の領域内共同研究を実施している。以上のように、研究代表者が進める本研究計画のみならず、異分野研究者との共同研究によって、当初予想し得なかった結果が得られてきており、当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Mmsタンパク質がどのように酸化鉄結晶の形態やサイズを制御しているかを分子レベルで解析する。そのため、X線構造解析によりMmsタンパク質の構造決定を行う。タンパク質間の相互作用や無機物との相互作用が予想される機能ドメインに着目し、構造に基づく分子レベルでの解析を進める。また、本領域内の研究者との共同研究によって、我々が作製した特異な形態を有する酸化鉄結晶の構造解析や、タンパク質の粒子形成過程におけるシミュレーション解析など、複数の方向から反応機構の解析を進める。また、表面の制御された磁気微粒子を合成し、リビング重合用触媒としての利用をはじめとした応用法を探索する。また、タンパク質を利用することによって、多様な形態や構造を持った磁性材料を創製し、新しい物性の発見に繋げる。これらの目標達成のため、領域内外の研究者との共同研究を積極的に実施する。
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