研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107010
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今井 宏明 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70255595)
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キーワード | 融合マテリアル / 分子制御プロセス / メソクリスタル / バイオミネラル / 結晶成長 / 高分子合成 / リチウムイオン二次電池 / 光触媒 |
研究概要 |
バイオミネラルは、有機分子の制御によってナノレベルから階層的に複合化され、その構造に由来する高い機能を発現する。本研究では、バイオミネラル類似の有機介在型階層的無機結晶(=メソクリスタル)を多様な物質系において創出することを目指している。最適な構造化によって無機結晶や有機分子の単独では得られない自然調和型・動的融合機能の発現が期待できる。平成23年度では、(i)バイオミネラルにおけるメソクリスタル構造の修復およびその構造を利用した高分子合成への応用、(ii)バイオミネラル類似構造の前駆体を利用した様々なリチウムイオン二次電池電極材料の作製と高性能化、(iii)鉄酸化細菌のバイオミネラリゼーションにならい多形と形態を制御した酸化鉄および二酸化チタンメソクリスタルの水溶液合成と反応選択性触媒としての応用、(iv)珪藻の粒子集積技術を模倣したナノ結晶集積技術の開発、などの検討を行った。 テーマ(i)においては、バイオミネラルのメソクリスタル構造を利用してポリピロールのナノ構造体の合成に成功した。これまでナノスケールの形態付与が困難であった有機高分子の高機能化へ応用できる技術として期待される。テーマ(ii)では、バイオミネラル類似構造の炭酸塩メソクリスタルを前駆体として様々な構造のマンガン酸リチウム結晶を合成し、これらが劣化の少ない優れた電池特性をもつことを示した。テーマ(iii)では、鉄酸化細菌を模倣した水溶液中における分子制御により、酸化鉄および二酸化チタンメソクリスタルを作製した。メソクリスタル二酸化チタンは酸化反応に選択的な光触媒活性を示すことを発見した。これらはバイオミネラル類似のメソクリスタル構造が多様な機能性材料として有望であることを示唆する結果である。さらにテーマ(iii)では、分子制御を酸化物ナノ結晶合成に応用して、ナノ粒子を不均一な凝集をおこさず集積させる技術を開発した。これにより、ケイソウのように均一かつ不規則なナノ結晶の集積構造を作製することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機分子制御や特定の前駆体を幅広く利用することで、多様なメソクリスタル構造の合成に成功し、それらの機能についても、高分子合成、二次電池、触媒・光触媒など広い視野で解析を進めることで、順調に研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは主に単独研究でメソクリスタルの合成と機能評価をおこなってきたが、より精緻な構造体の合成には有機高分子の専門家との連携が必要であり、高い機能性の発現には、電子・デバイス技術や結晶成長物理分野の専門家の協力が重要である。今後、新学術領域のメンバーとの共同研究を進展させ、メソクリスタルへの機能分子の融合を行うとともに、機能性の解析にも高度な知見を加えることで、新規な融合機能の開拓を目指す。
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