研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107010
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今井 宏明 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70255595)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 融合マテリアル / 分子制御プロセス / メソクリスタル / バイオミネラル / 結晶成長 / 高分子合成 / リチウムイオン二次電池 / 生体材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、バイオミネラル類似の有機介在型階層的無機結晶(=メソクリスタル)を多様な物質系において創出し、最適な構造化によって無機結晶や有機分子の単独では得られない自然調和型・動的融合機能の発現を目指している。平成24年度では、(i) バイオミネラル類似メソクリスタルを前駆体としたリチウムイオン二次電池電極材料の高性能化、(ii) メソクリスタル構造を利用した高分子合成、(iii) 酸化鉄メソクリスタルの合成と機能開拓、(iv) 酸化亜鉛ナノロッドメソクリスタルとポリピロールの融合による光応答性材料の創製、(v) エナメル質に類似したヒドロキシナノロッド配向集積体の作製の5テーマについて成果が得られている。 テーマ(i)においては、バイオミネラル類似構造の炭酸塩を前駆体として、様々なマンガン酸リチウムメソクリスタルを合成し、その構造と電気化学特性を調査し、電極材料のナノ構造と劣化の少ない優れた電池特性との関連性を検討した。テーマ(ii)では、メソクリスタル構造に存在するナノ空間を利用することで有機高分子が合成できることを見出し、様々な形態や無機・有機高分子の組み合わせに有効であることを示した。テーマ(iii)では、鉄酸化細菌を模倣して合成した酸化鉄が、リビングカチオン重合の触媒として優れた活性を発揮すること、有機分子の吸着剤やリチウムイオン二次電池電極材料としても優れた特性を示すことを明らかとした。テーマ(iv)では、c軸方向に伸長した酸化亜鉛ロッド状結晶をユニットとしたメソクリスタルにポリピロールを融合し、極めて高い光応答性を実現した。テーマ(v)では、ヒドロキシアパタイトのナノロッドが配向したメソクリスタル構造の作製に成功し、得られたメソクリスタル構造が、エナメル質と同レベルのヤング率を持ち、機械的特性を任意にコントロールできる可能を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、炭酸塩・リン酸塩・酸化物等の多様なメソクリスタル構造の合成に成功し、現状において、メソクリスタルの合成における有機分子制御や前駆体を利用する方法論を確立しつつある。また、それらの機能開拓についても、高分子合成・二次電池電極・触媒・光触媒・光応答材料・生体材料などの多岐にわたって、構造に由来する独自な物性が見出されている。したがって、合成面および機能開拓面のそれぞれにおいて順調に研究が進められていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度までは、主に単独研究でメソクリスタルの合成と機能評価をおこなってきたが、平成24年度より新学術領域のメンバーとの共同研究を進展させ、メソクリスタルへの機能分子の融合を行うとともに、機能性の解析にも高度な知見を加えることが可能となった。今後は、より新規な融合機能の開拓を目指し、有機合成、薄膜合成等の専門家との連携を強化するとともに、電子・デバイス技術や結晶成長の観察技術の専門家の密接な協力体制を構築する。
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