本研究では、材料構築のユニットをナノレベルで組織化し、それらの特性を巧みに融合して高度な機能を発現させる技術の確立を目指す。特に無機材料と有機材料を合理的な分子設計のもと精密に融合し、バイオ応用展開を実現する。ナノ粒子などの無機ユニットと脂質などの有機ユニットを交互積層法などによって分子集合体とする。これらのバイオ応用展開として、薬物運搬体、さらに光線力学療法用粒子等についても有機分子単独では実現し得ない機能発現をナノ融合分子集合体により実現し、革新的なバイオ・メディカル素子創成の方法論を開拓する。5年間の研究計画の初年度にあたる本年度は以下のような成果を得た。 目的の患部にすばやく送達し、外部からのシグナルに応答して内包物を放出するドラッグ・デリバリー用のハイブリッドカプセルとして、磁場応答リポソームを開発した。オレイン酸で疎水化したFe_30_4ナノ粒子と温度感受性高分子をリポソームに組み込んだリポソームを合成した。このリポソームに交流磁場を印加すると、Fe_30_4ナノ粒子の発熱が起こり、その熱によって温度感受性高分子が構造変化を起こし、脂質膜を乱すことで内包物の放出を誘起することを見出した。 近赤外光による光線力学療法を実現するために、可視光で活性酸素を発生させるフラーレンと近赤外光から可視光を発光させるアップコンバージョン(UPC)蛍光ナノ粒子の融合した材料の創成を目指している。その第一段階として、水に分散するUPC蛍光ナノ粒子の合成を行った。オレイン酸で被覆したNaYF_4粒子を溶液プロセスで合成し、これを脂質膜で修飾することで水に凝集することなく分散させることに成功した。また酸化物系のUPC蛍光体においても高輝度化をケイ素の添加によって実現した。
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