研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107011
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
片桐 清文 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30432248)
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研究分担者 |
冨田 恒之 東海大学, 理学部, 講師 (00419235)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 融合マテリアル / バイオメディカル応用 / アップコンバージョン蛍光体 / 光線力学療法 / ホウ素中性子捕捉療法 / ナノシート |
研究実績の概要 |
本研究では分子制御による精緻な設計に基づいて、ナノ融合分子集合体による動的融合機能材料の構築を行い、その応用展開として、バイオメディカル分野に焦点をあてている。以下にいくつかのトピックの成果を述べる。 1. 多糖ナノゲル-無機ナノ粒子ハイブリッドの合成とバイオ応用 ここでは、生体適合性と分散性に優れる多糖ナノゲルとハイブリッド化したナノ粒子の作製を行った。表面がオレイン酸で被覆された酸化鉄ナノ粒子を合成し、これをテトラヒドロフランに分散させ、CHPナノゲル分散溶液にインジェクションすることによって酸化鉄含有ナノゲルハイブリッド粒子を得た。TEM観察によれば酸化鉄ナノ粒子がクラスターを形成しナノゲルと複合化し、クラスターサイズはインジェクションする酸化鉄ナノ粒子分散液濃度で制御できることが分かった。得られたハイブリッドは既存のT2造影剤と同等以上のMRI造影剤としての性能を有することが確認された。またこのハイブリッド粒子への交流磁場印加による発熱も確認され、磁気ハイパーサーミアへの応用の可能性も示された。 2. 無機ナノシートを用いた金属・有機分子との融合マテリアルの創成 ここではアップコンバージョン蛍光体の新しい形態としてナノシートに着目し、UPC蛍光ナノシートを開発するとともに、近赤外領域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による吸収を有する金ナノロッドと融合することでそのUPC蛍光の増強を試みた。層状結晶であるK(La,Er,Yb)Nb2O7を合成し、その層間イオンの交換によって剥離し、(La,Er,Yb)Nb2O7-ナノシートを作製した。これを波長980 nm付近にLSPR吸収を有する金ナノロッドと融合すると、ナノシート単独と比較してUPC発光強度が2倍近くに増強された。このナノシートはポルフィリン類との融合で近赤外光照射による一重項酸素発生機能が発現することも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画では、具体的な項目として、まず「近赤外光による光線力学療法のためのナノハイブリッドクラスターの開発」に取り組んだ。前年度までの研究において、NaYF4をマトリックスとしたアップコンバージョン(UPC)蛍光ナノ粒子を脂質と複合化することで、水系溶媒に対しての高い分散性と生体適合性を兼ね備えたナノクラスターを合成することに成功した。本年度は、UPC蛍光ナノ粒子の希土類の組成などを検討し、より効率的に一重項酸素を発生させることのできる条件を見出すことができた。また、研究分担者 本年度は新たにUPC蛍光体の新しい形態としてナノシートに着目し、UPC蛍光ナノシートを開発することに成功し、近赤外領域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR)による吸収を有する金ナノロッドと融合することでそのUPC蛍光の増強にも成功しており、順調に成果が得られている。次に領域内の共同研究として「多糖ナノゲル-無機ナノ粒子ハイブリッドのバイオメディカル応用」に取り組んだ。ナノゲルの水中での分散安定性や生体適合性を活かした多糖ナノゲル-磁性ナノ粒子ハイブリッドについて、MRI造影剤、磁気ハイパーサーミアによるガン温熱治療のための材料としての有望であることを見出した。さらに、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT療法)への応用を目的にYBO3ナノ粒子の合成を行い、大阪市立大学 長崎グループとの共同研究としてBNCT療法に関する評価を開始するなど、こちらも順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は研究計画調書に記載された計画を極めて順調に達成しており、研究計画・方法、設備及び主な研究経費等について大きな変更は必要としていない。 また、これまでに領域内の共同研究を通じて、順調に成果を挙げることができていることから、今後も計画研究ならびに公募研究の研究者との共同研究を積極的に推進する予定である。そのため、当初の計画は着実に履行しつつ、共同研究等でより優れた成果が期待できる場合には、その研究に注力できるように弾力的に計画・設備等を運用していく予定である。特に中間評価で共同研究の推進をさらに推し進めることを期待する旨が記載されていたことから、領域として実施する「トピックス研究会議」において議論して、さまざまなアプローチによって共同研究を推進していく。また、アウトリーチも活発な活動が中間評価において高く評価されており、今後も様々な機会を利用して積極的に実施する。
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