研究領域 | 融合マテリアル:分子制御による材料創成と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
22107012
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹岡 敬和 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20303084)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ポリロタキサン / 刺激応答性ハイドロゲル / 無機微粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、有機ゲルの動的機能と無機微粒子の光学機能を融合させることで、環境応答性と光学的高物性能を併せ持った材料の構築を目差している。平成24年度の研究においては、微粒子集合体との融合を行うために必要な、“環境変化に応じて動的に応答し、かつ、伸張性と靱性に優れた性質を有する刺激応答性ゲルの調製”に取り組んだ。 これまでに刺激応答性ゲルの研究が盛んに行われ、様々な刺激に応じてその体積や形状を大きく変化させるゲルが調製されてきた。しかし、このような研究が始まって半世紀以上の歳月が経つが、克服すべきいくつかの問題が原因となり、未だ刺激応答性ゲルの実用化には至っていない。最も大きな問題の一つが、既存の刺激応答性ゲルの脆性である。ゲルの力学的強度を改善する試みは沢山報告されているが、そのほとんどが特殊な高分子網目構造を有するゲルであり、これらのゲルに必要とする刺激応答性を付与するとなると、そう簡単ではない。研究代表者は、技術や知識の蓄積がある刺激応答性ゲルの物性を保持しながら、力学的性質を向上させることができれば、刺激応答性ゲルの応用の促進に繋がると考えた。そのためには、高分子網目の大部分を形成する高分子鎖には、従来の刺激応答性の高分子鎖を利用し、架橋構造のみに改良を施すことができれば、望みの刺激応答性と必要な力学特性を兼ね備えたゲルになると思っている。平成24年度では、ポリロタキサンを架橋剤に用いることで、様々な刺激応答性のゲルを調製し、環境応答性および高伸張性、高靱性を示すゲルを調製することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、これまでに技術や知識の蓄積がある刺激応答性ハイドロゲルの物性を保持しながら、力学的性質を向上させることができれば、刺激応答性ハイドロゲルの応用の促進に繋がると考えている。そのためには、高分子網目の大部分を形成する高分子鎖には、既存の刺激応答性の高分子鎖を利用し、架橋構造のみに改良を施すことができれば、望みの刺激応答性と必要な力学特性を兼ね備えたハイドロゲルになるに違いない。このような考えの下で研究を進める中、可動性の架橋剤を用いることで、当初計画していた良く伸びる刺激応答性ゲルの構築に成功した。これらの架橋剤は、ビニル基により重合可能なモノマーであれば、様々なゲルに適用することができる。また、色々なゲルに高い伸張性とともに制御可能な機能性を容易に付与することが可能となるだろう。刺激応答性ハイドロゲルをこのような応用に利用することは、実現化の方向へと進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度に開発した液体のような振る舞いをする非常に良く伸びるゲル内に、無機微粒子からなる集合体を包埋することで、微粒子の集合体の変化に伴う光学物性を刺激によって変化できる材料の開発に取り組む。さらに、片栗粉の水溶液が示すようなダイラタンシー効果を発現するための条件についても模索する。無機微粒子と有機高分子もしくは有機高分子ゲルが融合することで、これまでにない新しい光学物性や力学物性を示す新材料の開発に今後も取り組んでいく。
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