研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
22108002
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
及川 英秋 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (00185175)
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研究分担者 |
南 篤志 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (40507191)
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キーワード | ペプチド合成酵素 / 大腸菌 / 抗腫瘍性物質 / 化学酵素合成 / 生合成 |
研究概要 |
東北大五味教授との共同研究として5種のベクターが使用可能な栄養要求性麹菌変異株を用いた異種遺伝子発現系を活用し、DNAポリメラーゼα特異的阻害剤アフィディコリンの効率的生産(130mg/L相当)を達成した。糸状菌は生物活性物質の宝庫であるが、一般に物質生産に必要な遺伝子数は10個以下であり、今回の成功はこうした多くの物質を麹菌で生産できる方法論を提供したことになる。天然物にはポリエーテルと呼ばれる化合物群があるが、その代表的化合物ラサロシドの骨格合成を担う鍵酵素であるエポキシド加水分解酵素Lsd19とその不安定な基質との複合体のX線結晶構造解析に成功した。これにより2組の酸性アミノ酸残基が関与する詳細な触媒機構が明らかにされた。このほか関連するモネンシン型ポリエーテルのエポキド加水分解酵素MonBI,BIIの触媒反応の詳細な解析により、従来の酵素には見られない弱い相互作用を介した精妙な触媒作用が明らかになった。これらエポキシド加水分解酵素は基質特異性が低いことが判っており、今後多様なポリエーテル合成への活用が期待される。テルペンは重要な天然物の一群であるが、この構造多様性をさらに増やすと予想される酵素の触媒機構が、問題の酵素の立体構造から明らかになった。この酵素はテルペンの普遍的前駆体であるゲラニル二リン酸(C10)の二重結合をメチル化する酵素であり、その触媒部位にはこうしたメチル基転移酵素には稀なMg2+イオンを保持するアミノ酸残基を介したピロリン酸認識部位が存在した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東北大五味と及川の共同研究で糸状菌の多種遺伝子発現系による物質生産が可能になった。これにより今後代表的な生合成経路の天然物を合成できれば、その汎用性が確立できる。最終的には遺伝子の自在な入換えによる新規天然物を合成することをはっきり視野に捉えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
糸状菌の多種遺伝子発現系は、AO3班の開発する迅速な天然物遺伝子同定法と組合わせ、ゲノムマイニングという機能未知遺伝子群の強制発現による新規物質の生産につなげたい。このほか、まだ論文にするに至っていないが、サフラマイシン型抗がん剤エクチナサイジンの酵素合成に向けて、より高度な制御を必要とする基質供給系の確立(キノカルシンの骨格構築機構の解明)を急いでいる。現在骨格合成を行う鍵酵素遺伝子を工業的生産に利用される宿主(細菌)に導入し、微生物変換による合成が可能になった。今後は詳細を詰めて効率の良い生産を目指す。
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