計画研究
本研究では、人為的な機能制御と分子多様性創出の格好のモデルともいえる、糸状菌由来メロテルペノイド生合成遺伝子クラスターをとりあげる。テルペノイドとポリケタイドのハイブリッド型化合物であるメロテルペノイドは、テルペノイドとポリケタイドそれぞれの多様性を相乗した分子構造多様性を有する可能性を秘めている。有機化学を基盤として、分子生物学や構造生物学、タンパク工学の技術などを駆使することにより、メロテルペノイド生合成マシナリーを酵素遺伝子レベルで解明し、複雑多様な分子構造の構築原理を明らかにすることを目的とする。昨年度は、Aspergillus terreus由来のterretonin生合成経路の解明をめざした。数多くのterretonin類縁体が天然から単離されており、その中には医薬品資源として期待されるものも含まれる。これまで、A.terreusのゲノム情報を元にterretonin合成遺伝子クラスターが見出され、ポリケタイド合成酵素(Trt4)、プレニル基転移酵素(Trt2)によって、farnesyl-DMOAが合成されることが示されている。Trt4、Trt2に加えて、flavin依存型酸化酵素(Trt8)、環化酵素(Trt1)をAspergillus oryzae NSAR1株にて発現した。その結果、Trt8によって、farnesyl-DMOAが酸化され、epoxyfarnesyl-DMOAが生成した。一方、Trt1によって環化した化合物は検出されなかった。そこで、環化前にcarboxyl基がメチル化される可能性を考え、メチル化酵素(Trt5)を、Trt1,2,4,8発現系に加えて発現した。その結果、環化後の生成物であるpreterretoninが生成した。よって、Trt5によるcarboxyl基のメチルエステル化が、環化反応に必須であることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
初期の目的をほぼ達成することができている。
今年度は、特に、基質特異性と潜在的触媒能力を利用したコンビナトリアル生合成に焦点をあてる。二次代謝酵素が示す最大の特徴の一つに、その寛容な基質特異性と潜在的触媒能力が挙げられる。従って、こうした寛容な基質特異性の甘さを利用して、一連の人工基質を酵素に作用させることにより、非天然型新規化合物ライブラリーの構築が可能になる。天然型基質の場合と同様な酵素反応の進行が予想される一方で、基質の構造に対応して、活性部位におけるフォールディング・コンフォメーションが微妙に影響を受け、在来見られない骨格を生成する可能性も十分期待される。また、今年度は新たに、立体構造情報に基づく酵素触媒機能の改変に着手する。酵素触媒機能の制御を行う上で、正確な立体構造情報は不可欠である。そこでPKSやFMO、また、7回膜貫通型のCYCについて、組み替え酵素の結晶化とX線結晶構造解析を試みる。立体構造情報に基づく合理的な変異の導入により、酵素触媒機能の拡張と最適化をはかり、天然物を凌ぐ生体触媒の創製をめざす。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
Nature Chemical Biology
巻: 8 ページ: 322-323
10.1038/nchembio.924
Current Opinion in Chemical Biology
巻: 16 ページ: 179-185
Acta Crystallogr., Sect.F : Struct.Biol.Cryst.Commun.
巻: 68 ページ: 355-358
doi:10.1107/S1744309112004964
Phytochemistry
巻: 77 ページ: 60-69
10.1016/j.phytochem.2012.02.002
Frontiers in Plant Science
巻: 3(Article) ページ: 57
doi:10.3389/fpls.2012.00057
ChemBioChem
巻: 13(in press)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA
巻: 108 ページ: 13504-13509
doi:10.1073/pnas.1107782108
J.Am.Chem.Soc.
巻: 133 ページ: 4746-4749
DOI:10.1021/ja2006737
巻: 108 ページ: 17533-17537
doi:10.1073/pnas.1110577108
巻: 67 ページ: 409-411
doi:10.1107/S1744309111002181
Bioorg.Med.Chem.Lett.
巻: 21 ページ: 2083-2086
10.1016/j.bmcl.2011.01.135
Marine Biotech.
巻: 13 ページ: 845-856
DOI:10.1007/s10126-010-9344-5
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~tennen/head.htm