研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
22108006
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
池田 治生 北里大学, 大学院・感染制御科学府, 教授 (90159632)
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研究分担者 |
小松 護 北里大学, 助教 (40414057)
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キーワード | 生合成マシナリー / ゲノム / 二次代謝産物 / 抗生物質 / 放線菌 / 異種発現 |
研究概要 |
Streptomyces属の微生物は一連の有用生物活性物質を工業的なレベルで生産することのできる、数少ない二次代謝産物生産菌である。我々はこれらの遺伝的背景をゲノム情報から利用しつつ、その物質生産に関する機能を最大限に利用した汎用宿主の開発を目的に本研究を行っている。昨年度は二つの課題(1.線状レプリコンを利用したベクター系の開発。2.転写に関わる変異遺伝子型による二次代謝産物生合成で遺伝子群の発現改変)を設定し検討を行った。抗寄生虫抗生物質の工業的生産菌S.avermitilisには線状の染色体と、さらに線状のプラスミドSAP1(94kb)およびSAP2(200kb)が存在する。SAP1はSAP2に比べ極めて安定にS.avermitilisに保持され、さらに伝達能を有しており、S.avermitilis間のみならず他のいくつかのStreptomyces属に接合伝達することが明らかとなった。これまで我々は大型DNA断片を効率よく宿主に導入する方法として、溶原化ファージの組換え機構を利用している。この機構を利用するため、染色体上の組み込み部位の領域を欠失させた後、SAP1上に組み込み部位を配置した。作製したSAP1ベクターを用い、数種の二次代謝産物生合成遺伝子群を含むコスミドクローンを効率良く導入することができた。さらに得られた形質転換体は他のS.avermitilis変異株に効率良く接合伝達によって移動させることが可能であった。転写に関わるRNAポリメラーゼのβサブユニット(RpoB)の変異は二次代謝産物生合成遺伝子群の転写を改変させることを明らかにしてきた。これまで取得したrpoB変異遺伝子を遺伝子交換法を利用することによって各種の二次代謝生合成遺伝子群に対する効果を調べた結果、変異遺伝子型との相関を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線状レプリコン(プラスミドを含む)を用いたベクター開発は前例が無く当初困難が予想された。我々がこれまで開発した溶原化ファージの組み込み機構を利用することによって効率良く線状ベクターを構築することができた。一方、転写に関する遺伝子変異が二次代謝産物生成に効果があることは興味深く、また保有している変異型遺伝子を用いてその形質を目的の形質転換体に容易に導入可能な系を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
線状レプリコンをもちいたベクター開発に関しては、今後異種菌株への接合伝達による移動を検討したい。また、線状レプリコンの安定性も問題が無いため、さらに酵母疑似染色体ベクターのような系に関しても開発を行っていきたい。なお、これら一連の線状レプリコンベクターは、二次代謝産物生合成遺伝子群など極めて大型のDNAを扱うことから、形質転換などDNA導入の効率が悪くなる。この点に関しては同じ線状分子であるファージDNAの形質転換方法などを参考に改良を行っていきたい。なお、評価に使う二次代謝産生合成遺伝子群は、上位の制御系との相性などから多くの遺伝子群を扱うことが重要であり、今後も完全長の二次代謝産物生合成遺伝子群をクローンを収集および組み込み可能な状態に構築していきたい。また、現在のところ汎用宿主はS.avermitilisをモデルとして行っているが他のStreptomyces属菌種も検討を行っていきたい。
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