研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
22108007
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
五味 勝也 東北大学, 大学院・農学研究科, 教授 (60302197)
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研究分担者 |
町田 雅之 (独)産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, チーム長 (30358006)
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キーワード | 糸状菌 / 二次代謝化合物 / 遺伝子クラスター / Cre/loxP / 麹酸 / トランスポーター / アフィディコリン / 細胞内局在 |
研究概要 |
(1)複数の二次代謝化合物生合成系の遺伝子を選択マーカーをリサイクリングしながら同一の宿主株に導入するために、変異型loxP配列を利用したシステムを開発した。当初、前年度に確立したCre酵素を直接菌体核内に導入することによりloxP配列に挟まれたマーカー遺伝子を除去する方法を用いたが、変異型loxP配列はCre酵素による組換え反応を受けにくいため、in vivo反応では効率よく除去反応を起こさせることができなかった。そこで、チアミンによって抑制を受けるチアミン合成酵素遺伝子(thiA)のプロモーターを用いてCre酵素を条件的に発現制御する発現カセットを作製し、このカセットをあらかじめ宿主株に導入した。この株に変異型loxP配列をもつ発現プラスミドを導入し、得られた形質転換体をチアミンフリーの培地で培養することにより効率良く除去反応を起こさせることができた。 (2)甜菜じゃのめ病菌Phoma betaeのアフィディコリン生合成遺伝子クラスターに含まれる4個の生合成酵素に緑色蛍光タンパク質(GFP)を連結した融合タンパク質を作製し、麹菌に導入して蛍光顕微鏡観察を行った。一方、局在部位の確認を目的にして、麹菌の各オルガネラを可視化するためのオルガネラマーカーとして、膜融合因子であるSNAREタンパク質にRFPを連結させた融合タンパク質を発現するプラスミドを作製した。蛍光顕微鏡観察の結果、生合成酵素のうち、2種類のP450はいずれも小胞体に局在する可能性が考えられた。 (3)麹菌の麹酸生合成遺伝子クラスターを構成している3種類の遺伝子のうち、転写因子を除くオキシドレダクターゼとトランスポーターの2つの遺伝子を高発現するプラスミドを、(1)で開発した選択マーカーリサイクリングシステムを利用して麹菌に順次導入した。2つの遺伝子の高発現により、麹酸生産量の飛躍的な上昇が認められ、特にトランスポーター高発現の効果が非常に高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である複数の二次代謝化合物生合成遺伝子の効率的な導入法がほぼ開発できていること、二次代謝科が号物生産におけるトランスポーターの高発現の重要性を示すことができたこと、さらに二次代謝化合物生合成酵素群の細胞内局在観察に必要な技術が確立できていること、により予定通り順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
複数の二次代謝化合物生合成遺伝子の糸状菌への導入法に関しては、より簡便で効率的な手法としてCre酵素と選択マーカーの両方を変異型loxP配列に挟んだカセットを持つ発現プラスミドを構築することを予定している。また、麹菌以外にAspergillus nidulansなどについても同様の導入法の適用を試みる。二次代謝化合物生合成酵素の細胞内局在に関わる配列の変異による局在変化ならびに酵素間の相互作用による局在変化を観察する。さらに、ペニシリンなどの細胞外排出トランスポーターの探索とその高発現による生産性向上の可能性を検討する。
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