研究領域 | 生合成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出システムの解明と制御 |
研究課題/領域番号 |
22108009
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
金谷 重彦 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 教授 (90224584)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 二次代謝反応 / 二次代謝物 / データベース / ゲノム科学 / バイオインフォマティクス |
研究実績の概要 |
地球上全体の顕花植物で生合成される二次代謝物(約106万種)の多様性を遺伝子レベルで理解することが,このように多様な二次代謝物を創出する進化のメカニズムを解明することへつながる.そこで,これらの二次代謝に関わる酵素の情報を生物種,酵素反応,酵素のアミノ酸配列と関連づけたデータベース(Motorcycle DB)の構築を進めている. 代謝物から酵素とその反応を検索することを目的に、基質と生成物が既知の酵素反応の登録を進めている.検索結果として酵素反応が出力される点が本データベースの特徴である.このリストから反応IDにおいてKR0001659を選択すると,この反応の詳細情報を得ることができる.さらにReaction Mechanismをクリックすると反応メカニズムが得られる. ペプチド配列から酵素反応を検索することも可能である.BLASTP Searchにより、酵素のペプチド配列をもとに反応検索を行うことができる.出力結果において,酵素大分類,代謝物種の大分類と小分類が得られる.一方で,ペプチド配列が非常に高いレベルで類似であってもその代謝反応は非常に多様であることがMotorcycle DBを使うことで把握することが可能である.このことは,NGSによる配列データをもとに,代謝経路を高精度で検討するときに非常に有益な情報となると期待される.現在までに,文献情報をもとに植物を中心に,モノテルペン合成酵素,セスキテルペン合成酵素,ジテルペン合成酵素,トリテルペン合成酵素,P450(CYP)酵素,アルカロイド合成,フラボノイド合成に関わる酵素の反応を整理し,DBへの蓄積がほぼ完了し、現在までに、全体で2421反応種についての整理が終わった. なお、データは全てhttp://kanaya.naist.jp/motorcycle/top2.htmlより公開されいる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の課題である「悉皆的二次代謝経路推定に向けたデータベースおよび要素技術の研究開発」の本プロジェクト全体に対する役割は、生合成マシナリーのアミノ酸配列と代謝物の化学構造情報を関係づけ、ゲノム上にコードされる生合成マシナリーの反応様式および鍵酵素反応にもとづいた代表的生合成経路を推定する方法を提供することである.現在までにデータベースのプロトタイプ設計は完了し、その使用方法について文献にて解説した.さらに、学術誌Plant Cell Physiology誌に"Systematization of the protein diversity in enzymes related to secondary metabolic pathways in plants, in the context of big data biology inspired by the KNApSAcK Motoercycle database"というタイトルで投稿し受理された.これにより本データベースは一般ユーザへ公開され、詳しい使い方を紹介するに至った.すなわち、本プロジェクトの前半に達成すべきことは全て完了できた. 今後はさらにバイオ・マシナリーに関わる酵素において特に修飾反応に関わる酵素群を集中的に文献より情報を抽出し、最終的には5000エントリー程度の酵素情報からなるデータベースの構築を目標とする.さらに、生合成マシナリー・データベースからの情報マイニングにより、出発物質から生合成される代謝物の予測、その逆方向の生産物質からの出発物質の予測、あるいは、遺伝子の機能推定を行うことにより酵素遺伝子のアノテーションを行い公開する.当初計画との変更はない.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は引き続き、生物種-代謝物-酵素の関係を体系化することを目的に、文献情報をもとにデータの拡充を行い、二次代謝物生合成としての酵素分類体系を構築する.特に、脂質代謝についての代謝反応と生物の関係を整理し、データベース登録を進める.さらに、申請者らの研究室ではオミックス情報と薬用/食用知識を関連させたデータベースKNApSAcK Family DBを開発し公開してきており、それぞれのデータベースとの関連づけを進める.また、二次代謝物の生理活性、生産が報告されている生物情報、有用植物の情報についてはすでにデータベースとのリンクづけを行う.最終的には、酵素情報から本プロジェクトで目指すもう一つのテーマである「生理活性」の情報を得ることを目的にリンク付けを行い、バイオ・マシナリー情報とオミックスならびに生理活性情報を得られる統合データベースへと発展させる.
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備考 |
生物種、酵素、代謝反応、タンパク質配列、酵素反応を網羅的に整理した二次代謝反応検索のためのデータベースシステム。
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