計画研究
抗生物質や抗ガン剤などの生物活性物質(二次代謝産物)の生産者である放線菌において、現在我々が認知できている二次代謝産物は、放線菌の生産能力のうちの1割ほどでしかないことがゲノム解析により明らかにされた。しかしながら、残りの9割にアプローチし、利用するための情報は未だ不十分であるため、既存の情報を整理し、生合成マシナリーの解明とそれを応用した新たなマシナリーのデザインのためのデータベースを構築することを目的とする。公共データベースに登録されている放線菌ゲノム配列のうち、二次代謝産物生合成遺伝子がよくアノテーションされているS. coelicolor A3(2)、S. avermitilis、S. griseusおよびSaccharopolyspora erythraeaのすべてのタンパク質に見出されるPfamドメインのうち、二次代謝産物生合成だけに関わっているもの、あるいは頻繁に見出されるものを抽出したサブセットを作成した。これらのドメインを他の放線菌ゲノム配列中に検索した結果、二次代謝産物生合成遺伝子を効率よく見出せることが明らかになったため、ドラフトゲノム配列を含む放線菌ゲノム配列から二次代謝産物生合成遺伝子を見出すウェブツール「2ndFind」を作成した。今年度はPfamデータベースが26から27にアップデートされたため、Pfam 27を用いて解析し直したが、前回と同じ結果となった。さらに遺伝子予測ステップに新たにAUGUSTUSを追加し、放線菌と同様に二次代謝産物の供給源として重要な真菌ゲノムの解析を可能とした。一方、生合成マシナリーの班員から依頼を受け、次世代シークエンサーを用いて2株の放線菌のドラフトゲノム解析を行い、それらの株が生産する二次代謝産物の生合成の解明に寄与した。
2: おおむね順調に進展している
Pfamデータベースの新版への対応を計画通りに行ったことや、真菌ゲノムへの対応という当初計画以上の成果を上げることができ、全体として順調に推移している。
2ndFindのユーザビリティーの向上に努めるとともに、ゲノム解析支援を例年通り行う。
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化学療法の領域
巻: 30 ページ: 122-128
http://biosyn.nih.go.jp/2ndfind/