研究領域 | 電磁メタマテリアル |
研究課題/領域番号 |
22109004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北野 正雄 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70115830)
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研究分担者 |
酒井 道 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30362445)
出口 博之 同志社大学, 理工学部, 教授 (80329953)
久門 尚史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80301240)
中西 俊博 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30362461)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタマテリアル / マイクロ波 / プラズマ / 非線形現象 / 波動伝搬 |
研究実績の概要 |
メタマテリアルおける反射透過に関する新たな研究として、自己補対構造の概念を拡張することを考えた。金属チェッカーボード構造の角の部分を抵抗膜に置き換えることで、バンドパスとバンドストップの特性を切り替えられることが分かった。 結合共振型メタマテリアルの研究として、バラクタダイオードを導入した磁気誘導導波路において変調不安定性に起因する、連続波からのパルス波の生成を実証した。また、電磁誘起透明化を模擬するメタマテリアルにおいて、非線形性の増大と電磁波の保存再生をそれぞれ実証した。 気体プラズマを導入した動的メタマテリアルの研究に関しては、巨視的透磁率を負とする共振器アレイ構造に対して、大電力のマイクロ波を入射したときの負屈折率領域の動的生成(高密度プラズマ生成)現象において、誘電率の勾配は透磁率の変化に応じて理論予測通りに変化することが確認できた。すなわち、メタマテリアル構造におけるWKB理論の構築へ向けた検討として、マイクロ波伝搬の巨視的透磁率の影響に関する知見を得た。 遺伝アルゴリズム(GA)によるメタマテリアルの設計の研究として、位相定数制御のためのメタマテリアル平面回路線路の伝送特性の向上、および反射位相制御のためのメタマテリアル・サーフェースの放射特性の向上について、モーメント法を基にしたGAによる形状最適化ならびに試作実験を行い、提案する方法の妥当性の検証を行った。 単導体素子による伝搬現象をよりマクロにモデル化する回路として、線電荷密度と電流を変数とした単導体分布定数線路モデルを開発した。このモデルにより、単純な構造に関しては手計算のみで現象が算出できるようになった。また、導体球と導体線から成るメタマテリアルの集中定数回路モデルに関する外部結合について、外部励振を電圧源として、遠方界放射はエネルギーの流れから放射抵抗としてモデル化できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
旋光性メタマテリアルにおける誘電率・透磁率・旋光性パラメータを独立かつ精密に制御することは非常に困難であることが、数値計算および実験的な検討によりわかった。しかし、反射・透過特性の制御の研究は、自己補対構造を拡張するという新たな概念の提案へと進展した。 結合共振型メタマテリアルに関しては当初計画よりも大きな進展があり、バラクタダイオードを導入した磁気誘導導波路における連続波からパルス波の生成の実証、電磁誘起透明化を模擬するメタマテリアルにおける非線形性の増大と電磁波の保存再生の実証に成功した。 気体プラズマを導入した動的メタマテリアルの研究に関しては、おおむね予定通り進捗し、意義ある結果を得ることができた。 任意形状素子で構成されるマイクロ波回路素子については、仮想グランドを考慮した設計に加えて電気壁を考慮した新たな設計、また任意形状素子で構成される放射素子については、素子間相互結合を考慮した設計に加えて交差偏波成分の低減を考慮した新たな設計を行い、数値的・実験的評価によって左手系媒質の特性改善を確認した。 当初の単導体素子モデルは、現象を記述するための素子数が多くなり、電磁界解析よりは粒度は粗いものの、解析式による記述できなかった.それに対して、単導体分布定数回路モデルを新たに導出し,伝搬現象の明確化が可能になった。また、その集中定数モデルの導体球と導体線構造に対しては、外部結合も含む等価回路により、設計問題への適用が見えてきた。これらは当初計画よりもより進んだモデルが構築できていると考えている。 以上より全体的に順調に研究は進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
旋光性メタマテリアルにおける誘電率・透磁率・旋光性パラメータを独立かつ精密に制御することは非常に困難であることが分かったため、円偏光に対する無反射現象を実現するという目的に絞った構造設計を行うことにした。これに加え、反射・透過特性の制御の研究として、我々の提案する拡張自己補対構造を実現することを新たな目標とする。 結合共振型メタマテリアルの代表として、電磁波を保存再生するメタマテリアルに関してさらに研究を進める。これまでの研究では、電磁波を保存する時間は短いので、保存時間を延ばす方法を考える。また、回路モデルを用いた解析も進める。 任意形状素子で構成されるメタマテリアル線路素子として、平面回路構造に加えて導波管構造についても検討を加える。また、任意形状素子で構成される放射素子として、単層構造に加えて多層構造についても検討を加える。そして、マイクロ波回路素子・アンテナに応用し、数値シミュレーション実験ならびに試作実験を行う。 現在メタマテリアルの外部に対する放射に関してはモードごとの放射抵抗によりモデル化を行っているが、モードが縮退に近い場合の扱いが難しい。これに対して遅延要素を含む回路モデルを考えることにより、放射の影響を考慮したモデルの可能性を検討する。また、集中定数回路モデルを粗視化することにより、マクロな振舞を表現するモデルを開発するとともに、電磁現象の設計ツールとしての回路モデルを目指す。 その他、当初計画通り進んでいる課題に関しては、引き続き計画通りに研究を進める。
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