研究領域 | 電磁メタマテリアル |
研究課題/領域番号 |
22109006
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 拓男 独立行政法人理化学研究所, 田中メタマテリアル研究室, 准主任研究員 (40283733)
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研究分担者 |
彌田 智一 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (90168534)
藤川 茂紀 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (60333332)
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キーワード | メタマテリアル / 金属ナノ構造 / プラズモン / DNAテンプレート / ブロックコポリマー / 自己組織化 |
研究概要 |
田中チームは、DNAテンプレートの自己組織化を利用した金ナノ三角構造の作製技術のさらなる改良を行った.三量体リング構造の物理的な強度を高めるために,ソラーレンを用いたクロスリンクによるDNA構造の固定と,リング構造をガラス基板に固定する際のガラス表面の化学修飾法の検討を行った.試料の光学特性は,15mm角の石英基板上に均一に分散、固定化した三量体リングの可視一紫外スペクトルを測定して評価した.その結果,金ナノ粒子同士がナノメートルの間隔を開けて結合していることを示す,特徴的な可視光吸収スペクトルの測定に成功した。また化学的に合成した金ナノ微粒子は完全な真球ではなく回転楕円体状に歪んでおり,それが基板に固定される際に表面プラズモンの共鳴波長に影響を及ぼすという新たな知見を得た.彌田チームでは、ブロックコポリマーナノ相分離構造および藻類マイクロ螺旋構造を鋳型とした金属自己組織化リングやスパイラル構造の作製と新規物性の発現を目指している。計画が遅延していた螺旋藻類スピルリナの効果的な構造転写(バイオテンプレート)と無電解めっきを用いた金属コートを達成した。さらに、萩行グループとの連携により、得られた金属スパイラル構造のテラヘルツ旋光性を見出すことに成功した。藤川チームでは,金属ナノ共振器構造をmm~cmオーダーで作製する基本技術確立をめざし、自身が開発したナノコーティングリソグラフィー法をメタマテリアルの加工に展開した。その結果高いアスペクト比を有する金属ナノフィンアレイの大面積作製を実現した。このナノフィンは、近赤外領域にフィンピッチや高さに依存した急峻な光吸収を示した。このフィン構造特異的な光吸収挙動は、フィン間およびフィン周辺の媒体雰囲気に依存し、周辺部の媒体屈折率の変化に応じて吸収波長シフトが観測され、屈折率センサーとしての可能性が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己組織化DNAテンプレートを用いて,メタマテリアルの共振器素子となる金ナノ微粒子が円環状に結合された構造を大量に作製する手法を確立し、その可視光スペクトルから必要とされる特性を持つ事を確認できた。ナノ・マイクロ構造テンプレートの作製では、金属構造の転写プロセスを実現できた。また、藻類らせん構造をテンプレートとした金属マイクロコイルの作製・評価では、キラリティのあるテラヘルツ波応答の確認に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
自己組織化DNAテンプレートを用いたボトムアップアップ加工技術では,作製した金属構造体をガラス基板等へ固定する際に一部の構造が壊れてしまうという問題がある.DNA分子の設計と,二重螺旋構造の固定化法を最適化してこの問題を解決する予定である。ナノ・マイクロ構造テンプレートでは、自己組織化手法に特有な構造揺らぎや欠陥が全体の光学特性に与える影響を数値計算等で解析するとともに,実際にTHz分光法を用いて測定することで評価する.またナノコーティングリソグラフィー法で作製した金属ナノ構造体については,その光学特性を実際に測定・評価するための装置の構築を行う.
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