研究領域 | 電磁メタマテリアル |
研究課題/領域番号 |
22109006
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 拓男 独立行政法人理化学研究所, 田中メタマテリアル研究室, 准主任研究員 (40283733)
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研究分担者 |
藤川 茂紀 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (60333332)
彌田 智一 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (90168534)
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研究期間 (年度) |
2010-06-23 – 2015-03-31
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キーワード | メタマテリアル / 金属ナノ構造 / プラズモン / DNAテンプレート / ブロックコポリマー / 自己組織化 / 金属マイクロコイル / 疑スプリットリング構造 |
研究概要 |
田中は,2光子還元法の高分解能化に加えて,DNAテンプレートを用いた金ナノ微粒子の集積化手法の高効率化を行った.2光子還元法については,レーザースポットの安定性と最適な露光条件を洗い出し,高い分解能を維持したまま,長時間の露光ができるようにシステムを改良した.DNAテンプレートについては,金属ナノ構造の形成後,それを基板に固定する工程において,DNA鎖が壊れてしまう問題があったが,ソラーレンをクロスリンカーに用いた固定手法の改良により,目的とする金ナノ粒子の三角構造の収率を43%にまで高める事に成功した.彌田は,光メタマテリアルの作製プロセスの開発を目指し,当該年度は,ブロックコポリマーテンプレート法を用いた3次元集積ナノ構造作製の検討を行った.ブロックコポリマーのナノシリンダー相への選択的化学修飾を介した,金属,金属酸化物,導電性高分子のナノピラーアレイ構造の作製プロセスを確立するに至った.藻類由来の左巻き螺旋構造をテンプレートとした金属マイクロコイルを作製し,媒体中に分散することにより,30 cm角のマイクロコイルシートを作製するに至った.大阪大学萩行教授との共同研究を通じて,テラヘルツ波領域における構造特異的な電磁波応答特性を見いだした.藤川はブロックコポリマーの自己組織的ナノ相分離構造を鋳型として、金ナノ粒子が円形に配置された疑スプリットリングナノ構造アレイの大面積作製とその光学特性評価について検討した。この単一スプリットリング構造の光学特性を評価するため、徳島大学の岡本らと共同研究を実施した結果、単一のスプリットリング構造での偏向応答を直接的に測定できることが示唆された。また高アスペクト比のフィン構造での光学特性は、数値解析によってその反射スペクトルにおける低反射波長(吸収波長)では、フィン間に低次から高次の定在波モードが存在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二光子還元法を利用した3次元メタマテリアルのレーザー加工法の開発とともに,DNAの自己組織化を用いたボトムアップ加工技術の有効性を実証でき,バルクメタマテリアル実現の感触をつかみつつある.金属マイクロコイルの電磁波応答の特性評価を検討し,テラヘルツ波帯域において,コイルのらせん形状に基づく光学活性特性を見いだすことができた.ブロックコポリマーテンプレートによるナノ構造作製においては,各種酸化物からなるアスペクト比の高いナノピラーアレイ構造の作製プロセスを確立できた.光学特性評価には至らなかったが,大面積作製や自立膜化など応用展開を見据えたプロセス開発に着手した.当初予定していた金ナノ粒子からなるスプリットリング構造の大面積アレイ構造作成そのものについては、直径100nm以下のものを大量に作成できるようになった.想定外の問題としては,リング構造を構成する粒子配置や粒子サイズの狭分散化に時間がかかっている。この問題を解決するために,次年度は孤立系のスプリットリング構造の光学特性評価に集中している
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今後の研究の推進方策 |
トップダウン型加工法とボトムアップ型加工法を平行して開発し,両者の長所を取り入れた,新しいメタマテリアルの加工技術を開発してゆく.さらに,メタマテリアルのアプリケーションとして,彌田は,バイオテンプレート法により作製したマイクロコイルのシート基板中における配向制御法の探索と円偏波放射特性のメカニズム解明と機能発現を試みる.ナノピラーアレイ構造においては,金属種やアスペクト比に依存した光学応答の理論構築と光機能デバイスへの応用展開を目指す.藤川は,現在進めている孤立系のスプリットリング構造の光学特性評価と、高アスペクト比のフィン構造をナノ隣接化したダブルフィン構造でのカップリングを期待して、光学特性評価を行うことに集中する.
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