研究領域 | 電磁メタマテリアル |
研究課題/領域番号 |
22109006
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 拓男 独立行政法人理化学研究所, 田中メタマテリアル研究室, 准主任研究員 (40283733)
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研究分担者 |
藤川 茂紀 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (60333332)
彌田 智一 東京工業大学, フロンティア研究機構, 教授 (90168534)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタマテリアル / 金属ナノ構造 / プラズモン / DNAテンプレート / ブロックコポリマー / 自己組織化 / 金属マイクロコイル / 擬スプリットリング構造 |
研究実績の概要 |
田中チームは,DNAテンプレートを用いた金ナノ微粒子の自己組織化構造形成手法に関する研究において,用いる金ナノ微粒子の形状が僅か数ナノメートルだけ楕円形に歪むだけで,それらを基板に固定した際,プラズモン共鳴波長が短波長側にシフトするという現象を見出した.また,2種類の特性の異なる磁性微粒子と,外部から印加する静磁場を利用して,自己組織的にメタマテリアルの共振器構造を形成する技術について実験を行った.その結果,磁場のOn-Offのみでメタマテリアルの構造の形成と破壊とを繰り返し行える,全く新しい能動的メタマテリアルが実現できることを示した.また,二光子還元法を用いたレーザー加工装置についても,光学系の改良によりレーザー光の利用効率を上げる事に成功し,加工速度を2倍に高めることに成功した. 彌田チームは,左巻きらせん形状の藻類スピルリナをテンプレートに,無電解めっきによる銅マイクロコイルを量産するバイオテンプレート技術を開発し,その分散シートのテラヘルツ帯域電磁波応答を明らかにした.また,突然変異体の右巻きスピルリナ,および培養条件によるらせんピッチの異なるスピルリナかららせん構造の異なる系統的な銅マイクロコイルを作製し,それらの分散シートからテラヘルツ帯域の円二色性を明らかにした. 藤川チームは,ブロックコポリマーの自己組織的ナノ相分離構造を鋳型として,金ナノ粒子が円形に配置され疑スプリットリングナノ構造アレイの大面積作製とその光学特性評価について検討した.とりわけ今年度は,可視光領域での光学応答を狙うため,直径が100nm以下の擬スプリットリングアレイの作製に注力した.特にこの単一スプリットリング構造の光学特性評価を実施し,単一のスプリットリング構造での偏向応答を直接的に測定できることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
田中チームは,DNAならびに磁場を用いた加工技術が大量のメタマテリアル共振器を加工できる事を示し,ボトムアップ的加工技術の有効性を実証することができた.二光子還元法を用いた高精度トップダウン的加工技術と併せて,目的に併せて適切な手法を選択できるようになった. 彌田チームにおける,らせん藻類由来の金属マイクロコイルのテラヘルツ帯円二色性の実証は,微生物の3次元構造に特異的な機能発現をめざすバイオテンプレート技術のプロトタイプと位置づけられる.この成果は,微生物工学,ナノ材料化学,テラヘルツ光学を跨ぐ新規な学際領域研究であり,本新学術領域研究の班内および班間の共同研究によって実現したものである. 藤川チームでは,単一擬スプリットリングでの評価が可能となり,金ナノ粒子配列とその光学応答の対応が系統的に議論できる端緒が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,田中チームは,トップダウン的な加工法とボトムアップ法の長所を融合した新しい加工技術の開発に取り組み,高精度かつ大面積の3次元メタマテリアルの実現を目指す.彌田チームは,本年度成果の論文発表を急ぐ一方,バイオテンプレート技術の普及と理科教材化を推進する.藤川チームは,金ナノ粒子の円形配置(直径100nm以下)による擬スプリットリングの光学応答について系統的な調査を進める.さらに金ナノフィンアレイをもつ特徴的界面ナノ構造の光学応答について,その挙動解析と応用について進める.
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