計画研究
本研究においては、シナプスを研究標的とし、アルツハイマー病の病態生理の中心現象である、アミロイドβ(Aβ)などの病態関連タンパク質が神経活動依存性に産生・分泌される過程を、最新技法を駆使して解明することを目標とする。まずマウス脳における神経細胞から脳細胞外腔に向けてのAβの分泌を、マイクロダイアリシス法を用いて測定する実験系を確立し、Aβ40に加えて、Aβ42の分泌をピコモル/1単位で検出することを可能とした。さらに、optogeneticsによる神経活動制御を目的とし、チャネルロドプシンChR2の改変体であるstep function opsin(SFO)の神経細胞発現に成功し、光刺激により神経活動が生じることを、マウス運動領皮質へのアデノウィルス感染系を用いたSFO発現により確認した。続いて両手法を組み合わせて、嗅内皮質を光刺激することにより、海馬においてAβ分泌を検出する実験系を立ち上げつつある。さらに、Aβ産生酵素であるγセクレターゼと、Aβ前駆体APPの切断酵素であるADAM10が、シナプス分子neuroligin1を神経活動依存的に切断することをRNAi,ADAM10条件的ノックアウト細胞などを用いて明らかにした。さらにこの切断はシナプス形成を負に制御することを明らかにした。ADAM10はneurologin1を選択的に切断するが、抑制性シナプスに局在するneuroligin2は、細胞外切断を受けるものの、その責任酵素はADAM10ではないことを実証した。
1: 当初の計画以上に進展している
Aβ神経活動依存性分泌の光遺伝学・マイクロダイアリシスを用いた実験系は、予定通りに立ち上がっている。加えて、neuroligin1の神経活動依存性切断という重要な知見につき、当初計画以上の進展がみられた。
Aβ神経活動依存性分泌の光遺伝学・マイクロダイアリシスを用いた研究については、in vivoでの実験系に加え、初代培養神経細胞なども組み合わせて発展を図る。Neuroligin1とシナプス形成については、同様に培養神経細胞における樹状突起棘形成評価系を用いて、詳細な検討を完遂する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Journal of Neuroscience
巻: 31 ページ: 6850-6857
doi:10.1523/JNEUROSCl.6467-10.2011
EMBO Journal
巻: 30 ページ: 4815-4824
doi:10.1038/emboj.2011.372