計画研究
本研究ではシナプスを研究対象とし、アルツハイマー病の病因分子であるアミロイドβペプチド(Aβ)の産生・蓄積にシナプス活動がどのような影響を与えるかを検討した。H23年度までに樹立したアデノ随伴ウイルスによるチャネルロドプシン改変体stabilized step function opsin (AAV-SSFO)発現系を利用し、マウス脳外側嗅内皮質にAAV-SSFOを感染させ、光刺激を行った。その結果コントロールであるAAV-EYFPを感染させた場合に比べ、AAV-SSFOを感染させたマウスでは外側嗅内皮質の神経細胞の活性化が確認された。さらにアルツハイマー病モデルマウスであるAPPトランスジェニックマウスを用い、H23年度までに樹立したin vivo脳微小透析法を用い海馬ISF中のAβ濃度を測定したところ、脳外側嗅内皮質にAAV-SSFOを感染させた場合、AAV-EYFPを感染させた場合に比べ、光刺激により有意に海馬ISFのAβ濃度が上昇することを確認することができた。繰り越し分の検討により、神経活動の亢進が軸索終末端におけるAβ分泌を促進することをin vivoレベルで明らかにすることができ、H25年度の慢性的なシナプス活動の変化がAβの蓄積に及ぼす影響に関する光遺伝学的手法を用いた検討に円滑に繋げることができた。
2: おおむね順調に進展している
AAV-SSFOを脳外側嗅内皮質に感染させることにより貫通線維路を光刺激により興奮させる実験系、及びin vivo脳微小透析法を用いた脳海馬ISFAβを測定する実験系の樹立は計画通り進み、アルツハイマー病モデルAPPトランスジェニックマウスを用いた急性刺激実験による結果を得るに至った。そこでさらに慢性刺激によるAβ評価実験の準備をすすめるに至り、H25年度の研究に円滑に繋がった。
アルツハイマー病モデルAPPトランスジェニックマウス脳外側嗅内皮質にAAV-SSFOを感染させ、貫通線維路を光刺激により慢性的に興奮させる実験系を樹立し、免疫組織化学的手法を用いてシナプス活動の慢性的な亢進がAβ蓄積に及ぼす役割について検討する。さらにin vivo脳微小透析法を用いて、海馬ISF中Aβ濃度についても評価を行い、シナプス活動の亢進がアルツハイマー病発症に及ぼす機能についてin vivoレベルで解明する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Neuron
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