計画研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
リンパ球はリンパ組織内で活発な移動するが、その移動原理を明らかにするために、2光子顕微鏡によるリンパ組織の生体観察を樹立した。リンパ節T細胞領域のストローマ細胞はFRC(fibroblastic reticular cells)と呼ばれ、T細胞ケモカイン(CCL21)を産生し、ICAM-1,VCAM-1を発現している。GFPマウスに正常骨髄を移入したキメラマウスを作成し、FRCをGFPで可視化した状態でリンパ球のリンパ節内の移動速度を測定すると平均速度10-15μm/minで活発にFRCに添って移動する様子が観察された。さらにリンパ節スライス組織を作成し、Tリンパ球の様子を2光子顕微鏡によって観察する方法を確立し、抗体、阻害剤の効果を直接調べた結果、リンパ球の組織内移動はGi依存性のLFA-1/ICAM-1を介する接着が介在していることが明らかになった。Tリンパ球が活発に移動しながらAPCとcontactする様子を再現するために、リンパ節ストローマを単離して2次元培養後、抗原提示細胞(APC)として骨髄由来樹状細胞を用い、OVAペプチド特異的OT-IIマウス由来ナイーブT細胞とCCL21存在下に共培養した。このin vitro系では活発なT細胞移動からAPCによる増殖応答まで再現できた。抗原のない状態では野生型Tリンパ球はストローマ上を移動し、APCと一過性の接触をするが、Ca2+の上昇を伴わず離れていくが、OVA抗原を提示したAPCの突起や細胞体に遭遇するとCa2+が速やかに上昇し、安定した接着を形成した。Mst1欠損リンパ球はストローマ上の移動速度が低下し、APCと接触しても安定した接着を形成する頻度が低下していた。さらにこの過程を調べるため、RAPLのRap1結合ドメインとRap1をそれぞれアミノ末端、カルボキ末端を配置したRap1センサーを開発した。細胞株による検討ではTCRおよびICAM-1に接着するとFRET効率が20%程度上昇した。今後、Rap1センサーやNFATc1-GFPをT細胞に導入し、Rap1の活性化から増殖応答まで追跡できる系を確立する。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Immunity
巻: 34 ページ: 24-38