計画研究
前年度の研究に引き続き、CD4/CD8陽性 DP細胞、CD4陽性 SP細胞の胸腺組織での動態を2光子顕微鏡で観察する系を用いて解析した。その結果、SP細胞ではMst1依存性のLFA-1/ICAM-1接着が高速移動に必要であることが明らかになった。一方、DP細胞は皮質に局在しMst1欠損、ICAM-1欠損では異常はなかった。胸腺細胞の負の選択環境をRIP-mOVA胸腺組織とOT-II CD4+SP細胞を用いて2光子イメージングを行ったところ、抗原特異的にAire陽性胸腺上皮細胞(mTEC)とクラスターを形成した。クラスターを形成しているSP細胞は細胞内カルシウムが持続的に上昇していた。一方、ICAM-1欠損組織、Mst1欠損組織ではクラスター形成が著しく低下していた。これらの結果と一致して、CD4 SP細胞の負の選択が障害されており、末梢にCD4陽性の活性化T細胞が増加し、多臓器におけるリンパ球浸潤、自己抗体産生が認められた。以上の研究および前年度までの研究からRap1シグナルによるLFA-1/ICAM-1接着がケモカインによる組織内移動および抗原特異的接着(免疫シナプス)に重要であることが判明したことから、Rap1シグナルによるLFA-1分子の調節について一分子解析を導入して、移動と停止における接着様式の変化を解析した。リンパ球細胞株にhalotagをC末端に付加したLFA-1を発現させ、halotagリガンド(TMR, R110)でラベルし、ケモカイン、Mn2+, PMAなどの刺激によるICAM-1接着時TIRFMにて一分子の観察が可能であることを確認した。また、人工脂質二重膜に抗原ペプチド・MHC, ICAM-1-GPIを組み込み、免疫シナプスにおけるICAM-1, pMHCをTIRFMにて一分子観察する系を樹立した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、リンパ球の組織内移動について末梢リンパ節、胸腺にて2光子イメージングに成功し、Mst1によるLFA-1/ICAM-1接着制御の重要性を示すことができた。さらに抗原特異的接着(免疫シナプス)によるリンパ球の移動停止を組織内および胸腺での負の選択環境下でイメージング解析ができ、この過程においてもMst1によるLFA-1/ICAM-1の接着の重要性を示すことができた。また、LFA-1/ICAM-1の一分子イメージングを樹立できた。
移動と停止におけるLFA-1/ICAM-1の結合動態をあきらかにするために、一分子イメージングを推進する。LFA-1側とICAM-1側を可視化し、LFA-1とICAM-1の結合動態と分布を明らかにする。当初は株化細胞を用いるが、LFA-1欠損マウス由来リンパ球を用いた再構成系で生理的な環境下での測定を目指す。人工脂質二重膜のシステムはICAM-1とLFA-1の双方を同時可視化できることから、ケモカインと抗原刺激によって移動と停止における両者の結合、分布を詳細に調べ、LFA-1の親和性と局在変化が移動と停止でどのように変化するか明らかにする。そしてRap1シグナル欠損(Rap1, RAPL, Mst1)による効果を明らかにしていく。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
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