計画研究
リンパ球の停止・移動過程におけるLFA-1/ICAM-1の結合動態の解析を行った。人工膜上に希釈ラベルしたICAM-1-GPIを組み込み、TIRF顕微鏡とEM-CCDカメラによるビデオレートでのICAM-1の一分子解析を行うことができた。10フレーム以上の連続輝点の解析から拡散係数は平均0.2-0.5μm2/secと脂質2重膜上の細胞表面分子としての挙動を示した。ケモカインによるリンパ球移動および抗原特異的T細胞による免疫シナプスによる停止接着の解析を行った。免疫シナプスを形成させるため、OVAペプチド/I-A(b)-biotinモノマー(pMHC)をstreptavidinを介してDOPC/cap-biotin lipid bilayerに結合させた。OVA特異的T細胞はこの人工膜に接着しpMHCの中心クラスターの周りにICAM-1がリング状に分布する典型的な免疫シナプスを形成することができた。CXCL21によるT細胞移動およびpMHCによる停止接着が人工膜上で再現系において、ICAM-1の一分子解析を行った。T細胞の接着面で、一過性に停止したICAM-1が観察された。停止した輝点をトラッキングし、軌跡から結合時間、拡散状態を測定した。これらの結果、ICAM-1の停止時間はケモカインの場合、先端より後端側で増大し、免疫シナプス形成による停止ではpMHCクラスの近傍で増大することが判明した。組織内での移動・停止を測定するため、胸腺およびリンパ節組織を用いた2光子解析を行った。胸腺では胸腺細胞のCD4/CD8ダブル陽性細胞からCD4またはCD8のシングル陽性細胞への分化過程で皮質から髄質への移行と負の選択過程があるが、その過程をイメージングによって追跡することができた。そしてこの過程にセマフォリンによる負の接着の調節が関与している可能性があることをin vitroで明らかにした。またリンパ節組織を用いてナイーブT細胞と制御性T細胞の組織内移動と抗原提示細胞への抗原特異的接着を可視化し、LFA-1/ICAM-1の関与を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
これまでの解析からT細胞の組織内移動および停止接着に関してLFA-1/ICAM-1が重要な役割を果たしていることを末梢リンパ節、胸腺において明らかにできた。ケモカインによる移動接着と免疫シナプスの停止接着過程でのLFA-1/ICAM-1結合動態を一分子イメージングを導入することで、移動と停止における結合動態を比較検討できるようになり、その分子的過程を追跡可能になった。以上の成果から分子レベルから組織レベルにおけるリンパ球の動態過程の解析ができ、予定をほぼ達成できたと考えられる。
LFA-1/ICAM-1結合の一分子解析を進め、移動と停止による結合動態を明らかにする。また、この制御機構に関してRap1シグナルおよびtalin, kindlin3などのLFA-1細胞内領域会合蛋白質を可視化し、同時に計測することによって関連を明らかにする。ケモカインの濃度や濃度勾配変化による効果、ケモカインや抗原のほか、セマフォリンなどの効果を測定し、組織内動態との関連を検討する。Rap1シグナルに関して活性化のレベルを交換因子およびGTPase活性化因子を導入するなどして調節し、移動と停止におけるLFA-1/ICAM-1結合動態の変化を追跡する。以上の結果を通して接着分子の制御から移動・停止に至る過程の素過程を抽出し、モデル化を検討する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件)
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