研究概要 |
我々は尾側基底核原基(caudal ganglionic eminence, CGE)に由来する抑制性ニューロンが主に尾側に移動する(caudal migratory stream , CMS)特徴を有することを見いだしたので、CGEに特異的に発現する分子を検索した。その結果、常染色体優性外側側頭葉てんかん(Autosomal dominant lateral temporal lobe epilepsy, ADLTE)の原因遺伝子であるLeucine-rich glioma inactivated 1 (Lgi1)を見いだした。さらに、分泌タンパク質として報告されているLGI1タンパク質が、胎生期においてはCGE神経細胞特異的に核内に局在することを見いだし、その核移行を担うシグナル配列を同定した。 大脳皮質の抑制性ニューロンは、大脳基底核原基から脳表面に平行に背側に向かって移動して皮質板へと進入するが、その際、鳥類やは虫類においては終脳壁全体を移動していくのに対し、げっ歯類においては主に辺縁帯及び脳室下帯を移動していく。移植実験の結果から、この特異的な移動経路はげっ歯類における「場」の変化によることが示唆されたが、この「場」が霊長類においても存在するかを検討するため、マーモセットにおける抑制性ニューロンの移動経路を調べた。胎生80日及び91日のマーモセットで形態学的に解析したところ、げっ歯類と同様に辺縁帯及び脳室下帯を主に移動することを見いだした。以上より、抑制性ニューロンが好む特異的な移動経路の「場」は、霊長類においても保存されていることが示唆された。
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