計画研究
まず、昨年までに見いだしたLgi1遺伝子は、予想通りCOUP-TFIIの下流分子であることを示唆する知見を得た。これについては、今後さらに検証していく予定である。また、抑制性ニューロンの移動経路として見いだした尾側細胞移動経路 caudal migratory stream(CMS)の発生起源を調べた解析で、間脳の視索前野(POa)が含まれることを発見したが、そのPOa由来のCMS移動細胞は、極めて限局した細い経路をほぼ特異的に通って尾側に向かうことを観察した。そこで、この特定の経路を通ってから皮質に分布する意義を調べるため、この経路を人為的に乱した場合の皮質への分布を調べた。その結果、皮質に進入するタイミングと分布する部位が変化することを見いだした。また、尾側基底核原基(caudal ganglionic eminence, CGE)、外側基底核原基(lateral ganglionic eminence, LGE)、POaの各々のマイクロアレイ解析をマウス胎生13.5日で行い、比較検討して、移動細胞側で「場」からの拘束を受容する細胞表面分子の候補を検索した。そこで得られた候補分子について、さらに胎生期マウス脳を用いたwhole mount in situ hybridizationでCOUP-TFIIと局在が似ている分子を同定した。さらにRNAiベクターを子宮内胎児脳電気穿孔法でPOa特異的に導入したり、全大脳半球培養法を用いて細胞分布を解析すること等により、この移動経路に与える影響を検討している。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画していた、尾側細胞移動経路 caudal migratory stream(CMS)を構成する抑制性ニューロンの発生起源を明らかにしその移動経路を制御する分子機構を解明するという目標については、既にそれを担う受容体及びリガンドを同定することができ、その経路が乱れたときの最終的な細胞分布への影響も見いだすなど、ほぼ達成することができた。これらについては、現在論文にするために様々な詰めの実験を追加しているところである。加えて、興奮性ニューロンについても不規則な動きをする未知の新しい細胞群を見いだすことができたため、現在その解析を進めている。後者は、当初の計画時点においては未発見であったが、本研究での細胞移動経路の詳細な観察の際に新たに見いだした細胞群である。
放射状(法線方向)移動する細胞について、特定の軌道をとらず頻繁に移動方向を変換する一群の細胞があることを最近見いだしたので、その詳細な移動経路や分裂能の解析、既知の移動様式との相違などを明らかにする。また、放射状移動するニューロンが脳表面近くで層構造を形成する際、「停止シグナル」を受けて停止するだけなのか、または、ある程度の移動能を保持したまま層構造を形成していくのかは未解明のため、シミュレーションのためのモデル作成を試みる。
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