研究領域 | 動く細胞と場のクロストークによる秩序の生成 |
研究課題/領域番号 |
22111007
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
林 茂生 独立行政法人理化学研究所, 形態形成シグナル研究グループ, グループディレクター (60183092)
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キーワード | Drosophila / 陥入 / 上皮 / 気管 / 細胞分裂 / 形態形成 / 定量生物学 / 細胞運動 |
研究概要 |
上皮細胞シートの陥入における力学メカニズムを理解するために二つのアプローチで研究を行った。1)遺伝学、および薬理学的な手法により細胞の動態を阻害して陥入に及ぼす影響を検討した。陥入の時系列解析により陥入運動は細胞分裂間期にある細胞のアピカル面収縮と接着面の入れ替わりを伴う比較的ゆっくりしたphase 1と、中心部分が急激に落ち込み細胞分裂が再開するphase 2の二つの時期に分かれる事がわかった。細胞分裂の再開はphaseの転換時の陥入中心においてまず認められたため、細胞分裂が急激な陥入を引き起こすとの仮説を検討した。その結果、細胞分裂が起きない突然変異体ではphase 2への移行が起きないが、陥入部位の一部の細胞で分裂を回復させると陥入速度が速まる。分裂に先立つ細胞の球状化が陥入加速に十分であること、などがわかった。更に細胞分裂以外にFGFシグナルによる誘因力、およびEGFシグナルによる平面的な収縮力なども陥入に貢献する事がわかった。従って陥入には少なくとも3つのメカニズムが関わり、いずれか一つ、もしくは二つが欠けても陥入が進行しうることがわかった。 2)陥入時における力の分布を推定するために四次元のタイムラプス像を元にして細胞形状の精密な計測を行った。そのためには細胞膜、もしくは接着結合部位の形状を多角形(多面体)に近似して測定するシステムを開発した。本システムではまず細胞形状の抽出を自動で行い、引き続いて主導での修正、細胞のトラッキングを行う。更に市販のソフトを用いて細胞核の位置と形状を測定して細胞形状と共に細胞の形態変化を多面的に捉える事を行っている。 これらの結果を基に細胞の力学モデルを構築する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
細胞の球状化による陥入の促進作用は当初全く予想していなかったしくみで新規性が高い。球状化の役割の発見により、陥入前での上皮の緊張の高まりと、その後の細胞分裂開始による緊張の解除が早い陥入への引き金となるという仮説を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新学術領域に参加している専門家(画像解析、物理学者、イメージング)との共同研究を通じて研究を加速する予定である。また他の実験系の研究者を共同研究に招いて本研究で開発中の観察システムと画像解析技術を活用する共同研究を進めている。
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